2017-03

「いい保育」と「上手い保育」 vol.7  ~「介入しない」というアプローチ~ - 2016.10.25 Tue

(この一連のシリーズは、家庭での子育てに応用することももちろん可能ですが、一応保育士向けなのでわりと厳密なニュアンスになっています。
家庭の子育てならば、あまり細かい点まで気にしなくてもいいので少し割り引いて読んで下さいね)


少し日にちが空いてしまいましたが、前回のおわり部分。

>では次に、子供が大人に一瞬視線を送ったけれども、そこで止まらずに他児の遊具を奪ってしまった場合の対応についても見てみましょう。

の続きからです。





こういう場面に直面したとき、一般的な大人の対応だったら「注意」をすることになるでしょう。

もし、その子が保育時間も負担になるほど長くはなく、家庭でも両親や家族が子供を自然に受容することができており、家庭に安定した生活基盤や経済基盤があり、家族自身もなんらかの大きな精神的負担を受けていることのない状況があり、話をしたり相談をする相手がいるなど育児に大きな不安や心配のない状況があり、子供自身も精神的身体的な安定を得られている子であれば、そこで「注意」や、「叱る」などの対応をしたとしてもそれでよいかもしれません。

かつては都市部でもそういう子供は多かったですし、現在でも地域によってはそういう子供が主流であるところもあることでしょう。


しかし、現在はさまざまな子供や家庭、就労する保護者やなんらかの理由で保育所に預ける人を取り巻く状況は変わってきており、そのような対応しかできないのであれば専門性のある保育士というには不十分になってしまいます。



では、「注意」ではないどんな対応方法が考えられるのでしょうか?

保育として考えるのであれば、ひとつは「介入しない」です。

「介入しない」というのは、イコール「放っておく」ではありません。
介入はしないのだけど、「見守る」のです。

このときの「見守る」のニュアンスは、「積極的な肯定はしないけれども否定もしない態度」です。
否定的な気持ちを持って保育者が見ていたら、その取ってしまう子はさらにそういったネガティブな行動をする理由を募らせてしまいます。かといって、好ましくないことを許容や肯定する必要もありませんね。

×「してはならないことなのに、なんであなたはするのかしら・・・・・・」
○「ああ、そうなのだね。ではこれからあなたはどうするのかな?」



これまでの既成の保育・子育てのアプローチでのもっとも大きな特徴は、「○○できる」「正しいこと」「結果」を求める余り、大人が「過干渉」になってしまうことです。
干渉をして子供にその場での正解の行動をとらせたからといって、それがそのまま子供に身につくわけではありません。
しかし、それを繰り返すことが「子供への関わりである」というのが、一般的な子育てへの認識になっています。


子供自身の力や成長として身につけさせるのならば、介入することで「正しい結果」を持たせるのではなく、子供が自分でその行動を身につけられるように導くことが大切です。

ですから、そこで注意をしてしまうことはあまり上手い対応ではないのです。




介入せずに見守っていたとします。
すると、とられてしまった相手の子ははどうするでしょうか?

それはその子によりますね。

取られたことを大して気にもとめず遊び続ける子もいます。
取られても、すぐに別の遊具を自分で見つけて遊びを切り替える子もいます。

または、
泣くことで感情を表す子。
取られることに抵抗する子もいます。
反撃する子、取り返そうとする子もいます。
そのとき噛みつきや叩くなどの行動になってしまう子もいることでしょう。


そのような相手のことも考えて保育士は、その場その場で適切な対応を取る必要がありますね。
相手が普段から噛みつきが出ていて、大きな怪我になってしまうようなことが予測されるのならば介入することも選択肢のひとつです。
そのように、「こうすべき」という正解がきまっているわけではありません。保育士ならばそのことは理解していることでしょうけれども、一応明確にしておきますね。



もし、その相手の子が取られたことによって大人に助けを求めてきたとき、それをそのまま受けて上げます。

このときも、余計な干渉にならないようにします。
どういうことかというと、ただ受けるのです。
どうすべきかを伝えたり、「返してもらってあげるから」などと大人が介入を申し出る必要はありません。

「ああ、とられちゃったんだね。それは嫌だったね」

と、ただ受けます。
「そこからどうするか?」はその子に考えさせるのです。

子供によっては、受け止めてもらったことである程度満足して、別の遊びに切り替える子もいますし、「かえして」とその子にいいにいく子もいます。

この受け止めるときに、その取られた子を「かわいそうだ、かわいそうだ」「あなたが正しい」といった大人の価値判断や主観の入った対応をすると、それを見ている取ってしまった子が疎外感を持ち(つまりはその子に否定を積み重ねること)、その子は余計に意固地にならざるを得ません。そうなればそれは、その子が自発的に正しい行動をとれるようになる芽をつむことになります。

なので、「ただ受ける」のです。



するとどうなるでしょうか?

その取ってしまった子と保育者の間に信頼関係が築かれていれば、ことさら注意などをせずともその行動が良いものではなかったことをその子は自覚し、「どうするべきなのか?」「どうすればよかったのか?」を自発的に考えるようになります。


取られてしまった子にとっては、自分でその後の行動を考え決め実行する経験となります。
このとき、大人が介入して「正しい結果」を出すことをアプローチとして繰り返していくと、子供は自分で考え行動する習慣を最初から持たなくなります。

それが積み重ねられていけば、子供たちは子供たちだけで仲間関係を営む力を何歳になっても持てなくしかねません。
このシーンを僕は2歳前後の子供で想定して書いていますが、そういった介入の多い保育を続けていればその子たちは年長になってすら、トラブルばかりの友達関係ともなりかねないのです。

ですから、大人は「正しいこと」を「作り出す」アプローチをすることは保育としては不十分なのです。



そのように、大人の意図的な介入や、「取った子に返させる」「あやまらせる」といった「落としどころ」を保育者があらかじめ設定せずに、その子への「否定」を積み重ねないで対応することができていくと、その取ってしまった子が次から取らなくなったり、取る前に大人をかえりみて踏みとどまることができたり、自分で取ってしまったものを返す姿が見られるようになっていきます。
そうしたら、そこにニッコリと肯定的な笑顔を向けたり、「うん」とうなずくなどの「認める」アプローチ(つまり肯定)を積み重ねることができます。

こうすると、「プラスの積み重ね」によって子供をより適切な姿に導いてあげることができるのです。

「正しいこと」の刷り込みのアプローチや、「しつけ」のアプローチは、「否定」になることを避けられないので、「マイナスの積み重ね」になってしまいます。

否定になってしまうところを否定にならずに子供を導ける。このことはまさに保育の専門性のあらわれではないでしょうか。


この「認める」の部分をオーバーな「褒める」ですれば、より子供を適切な方に導けるのではないかとしてしまう人もいます。
しかし、それは大人の作為が子供に見透かされるので、かえってあまりよろしくないのではないかと思います。


今回の例にとったケースはあくまで一例です。この通りにしなければならないのでもなく、この通りになるというわけでもありません。
「否定の積み重ね」にならないアプローチのモデルにしていただければと思います。


次回はまた別のかたちでのアプローチ「包括的受容」について見ていくことにします。


つづく。

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● COMMENT ●

難しい

おとうちゃんさん、こんにちは
昨日も長女が大癇癪でした。
私がした"はなし"も娘からすれば"怒られた"。
大体そういう時は、してるんですよね。『正しいことの刷り込み』話。
子どもの世界は『正しいこと』ばかりではないのに、ですね。
しかし、長女の真っ直ぐな気質には骨折れます、、。

うーん

「遊びの中での声のかけ方」という記事で、「遊びを保障して(守って)あげること」が大切と書かれていたかと思います。
これは家庭での子育てのアプローチであって、保育では「介入しない」方がよいということなのでしょうか?
「欲しいおもちゃは取っていい」ということを学習してしまわないのでしょうか?
それとも、何らかの理由でネガティブ行動に出ている子にだけ「介入しない」アプローチを取るのでしょうか?
大人がイニシアティブを取るのは家庭のみで保育では駄目ということなのでしょうか?家庭と保育のアプローチの違いをもっと知りたいです。


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