2017-11

『今、日本の保育の真実を探る』シンポジウム 報告 vol.1 - 2016.09.19 Mon

先日のこのシンポジウムに参加してきた報告を、不定期ですが何回かに渡ってお送りしたいと思います。
(学術的な見解などは主催している”発達保育実践政策学センター”の報告やその他の研究者の先生方のお書きになっているものの方が詳しく正確だとは思いますが、僕なりの見方として述べていきます。もし記載や解釈などに間違いがありましたらどうぞご指摘ください)


結論から言って、大変有意義なシンポジウムでした。

まずは「このシンポジウム自体がなんなのか?」というところから説明していきますね。






”発達保育実践政策学センター”というものが、2015年成立した国の”子育て支援法”の後押しを受けて同年東京大学内に東京大学大学院教育学研究科付属施設として設立されました。

そういった意味では公的な色の濃い研究機関である特徴があります。
それはまた、ここでの研究結果が今後の国の児童福祉・保育・教育政策に反映されやすいということでもあります。


そしてこの”発達保育実践政策学センター”が、公的な意味合いのあるものとしてはまた規模から言っても日本初といえる大規模な調査を行いました。

こういった保育現場に対する国単位の大規模な調査は、OECD加盟国ではすでに各国で行われていることでしたが、日本では遅ればせながらようやく始まったわけです。


この調査が特徴的なのは、保育現場である、各保育施設(認可無認可を含む保育施設、幼保一体型の認定こども園、幼稚園等)において1歳、3歳、5歳担当保育者への調査により、その実態を解明するとともに、各施設の施設長・主任、それから各自治体の首長・保育関係部署への調査合計約3万人を行っていることです。


その名称に「政策学」と入っているように、単なる保育現場の調査だけでなく、行政の動きがどのようにその保育の実際に影響を与えているかの関連も読み解こうとしています。
(例えば、どういう傾向をもった人が首長になることで、どういった影響がでているかなども・・・)


ただ、現状においてはまだまだ課題も多いことを率直に述べられていました。
(この第一回調査は、アンケートによる「そう思う~~~~そう思わない」式の5段階選択方式で、主観的意見が中心になっていること。全施設の全回答ではないため、データそのものに偏りがある可能性のあること。各国でも調査方法自体がいまだに未成熟であること等々。)



僕が気になったのは、アンケート調査の回収率が低い点です。
約9万人を対象に送ったアンケートですが、回答数(約30700名、7千施設)とやく3割です。

その内訳、(回収率)

・施設
幼稚園 40%
認定こども園 45%
認可保育園 50%
小規模保育所(地域型保育) 35%
認可外保育施設 15%


・自治体
首長 33.1%(回収実数577)
子ども子育て支援担当部局担当者 46.6%(実数811)

となっています。


こういった調査に協力的なところは、普段から保育の質やその向上に意識を持っているところが必然的に高くなることでしょうから、このデータ結果は本当の実情よりも”よい状況”が数値化されている可能性も高くなります。
もちろん、それでも意味のないわけではありませんが、これらの調査は実際の国の施策や保育行政に影響を与えていくものですから、むしろ大変な状況になっているところほど声を上げてもらった方がよりよい方向に動かせていける可能性があるわけです。
(人員配置や施設補助費、研修の予算がつくとか、事務補助員の予算がつくなどなど、実際的な動きとして)


ですので、今回回答できなかった施設も、今後この調査の続きや、こういった調査が活発に行われることになるでしょうから、是非とも積極的に協力していただきたいと思います。



このシンポジウム、そして”発達保育実践政策学センター”の基調にあるのは、保育の質の維持・向上であると思われます。

現在でも大変保育への関心が高まっている時代ですが、まだ「待機児解消」の観点から「量的な拡大」を中心に考えられています。

もちろん、それも大切ですがその量的拡大ばかりに目がいけば、質はおろそかになってしまいます。
次代を見据えて、その質に関しても先手先手を打っていかなければなりませんね。




今後、ここで挙げられたデータについても述べていきたいと考えておりますが、指定討論で行われた文京区長 成澤 廣修(なりさわ ひろのぶ)さんのお話も大変興味深いものでした。

そのなかの言葉
「東京都がつけた保育補助予算120億円のうち、保育の質の向上に充てられる額はそのうちの1000万円しかない」

とのことでした。


量的拡大には目が行っているが、質はほとんど顧みられていないというのが現実になっています。

東京都HP「平成28年度9月補正予算(案)について」 

こちらの、一番下 「保育施設に対する巡回指導等の体制強化【拡充】 10百万円」がそれに当たる。
注:保育指導のできる巡回指導非常勤職員10人分の予算)


また、全国的にはその量的拡大を「規制の緩和」を背景として行われていること。文京区はそれを極力せずに保育施設の拡充を行っていることなどもおっしゃっておりました。



量ばかり増やし、質を担保してこなかったところでは、これはすでに大きな問題として出てきてしまっています。


今回の調査、シンポジウムは、保育の質の維持・向上を考え切り替える、大きな節目になったのではないかと思います。



時間をみつけてまとめていきますので、続報は気長にお待ちください。

明日は多摩センターにある幼稚園で、子育て講演をしてきます。
いい会にしたいと思います。



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子育て講演

初めてコメント致します。おとーちゃんのブログが大好きな読者の一人です。

明日の子育て講演は一般参加は受け入れていますでしょうか?

> 初めてコメント致します。おとーちゃんのブログが大好きな読者の一人です。
>
> 明日の子育て講演は一般参加は受け入れていますでしょうか?


すみません、明日の講演は一般募集のないものです。

年内中に一度は都内で一般募集のある講演を企画しようと考えておりますのでお待ちくださいね。
また、それ以外にも参加できるものがありましたらブログ上にてご案内いたします。

おとーちゃん様、お忙しい中お返事ありがとうございますm(_ _)m
近くに住んでいるものですからもし伺えたらと期待してしまいました、残念です。
また都内での講演がありましたら是非伺いたいです。
明日は一日雨の予報ですね、風邪をひかぬようお気をつけて下さい。

保育の質

文京区長の成澤氏は、以前日経デュアルのインタビューにも答えていらっしゃいましたが、非常に的を得た保育行政をなさっている印象を持っています。行政のトップの方々が、子どもにとって何が大切か、子を持つ親にとって何が求められているか、を正しく認識して、小手先や人気取りではなく保育の質向上の一助となってほしいです。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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