2017-03

条件付きの肯定はいらない vol.5 - 2015.03.25 Wed

A子の事例つづきです。









スイミング、リトミック、算数教室、英語教室、バレエなどの習い事が3歳になった頃から徐々に増えていった。(それ以前の2歳くらいからも、英会話教室や家庭で行う早期教育などは行っていた)

それにいつ通うかというと、園の閉所時間の迎えに来て、そこからその習い事教室へ行くまでの間に菓子パンを食べさせて、それから習い事である。
また、土曜日はふたつみっつの習い事のはしごをする。


あるとき、他児とモノの取り合いでトラブルになった。
普段からイライラや情緒不安定を抱えているA子には、これはしょっちゅうあることなのだが、このときは特に怒りが激しく、激高して大泣きし、保育士が受け止めていると、さらにその後感情を吐露するように「わたしは、〇〇の習い事なんかしたくなかったんだ。いきたくないよー」と何度も繰り返しつぶやきながらさめざめと泣き続ける。




さて、もしこれが大人だったとして考えてみましょう。

なにか関係のないことで激高し、暴れ、その後何時間にもわたって、泣きながら独り言をつぶやいていたとしたら、その人は相当に精神的に追い詰められていると誰しもが感じることでしょう。


このA子にしても、3歳になったばかりの状況で、平日は毎日12時間近くの保育時間を生後4ヶ月くらいの時点から現在まで続け、多少の熱や体調の悪化でも休むことが出来ず、食事の多くは外食、睡眠以外で家庭で過ごす時間はほんの2~3時間あるかないか、休日の内の1日は習い事の掛け持ち、残りの1日は親の買い物やレジャーに付き合わされることも多いという生活を続けてきています。
さらに、親からの関わりは疎外や無関心が強い。

これだけのことが積み重なっていれば、このA子に問題行動がでるのは必然的なことでしょう。


問題が習い事だけでないことはわかっているのですが、それを伝えてもなかなか実際の親の対応に響くことがないので、
このときは、子供が明確に意思表示をしていることでもあり、習い事についてを母親に伝えました。

現状は明らかにA子に負担であり、さらに習い事を増やすことはリスクが大きいこと。実はこの時点で、母親はもうひとつ習い事を増やすことを考えていた。
結果的に、なんとかさらに習い事を増やすことは思いとどまってもらったのですが、このときに、「習い事は、全部A子がやりたいと言っているからやらせている」と話していました。

このA子が「〇〇をやりたくない」と言っている習い事に対しても、「A子が自分からやりたい」と言っていたと母親はかなり本気で思っているのです。


経験上、この、親の願望を子供が「したがっている」と子供に言わせてやらせるケースは深刻なものが多いです。

このスタンスで子育てに臨んでいるケースは、あとあとまでひきずることがあります。(あとあとというのは、思春期や青年期以降もです。)
なぜなら、親が子供にさせていることに対して、自分で責任をとろうとはしていないからです。
子供を追い詰めていたとしてすら、自分が間違っていた、子供に悪いことをしてしまったとは、親は感じてくれません。
子供はそのことで、あとあとまでも苦しむことになります。



ちょっとそれますが。
これまでの記事にとても深刻なコメントがいくつも寄せられました。
前の記事のコメントには、「まさに・・・」で始まるコメントがいくつもあって、最初は同じ人が間違って二重に投稿してしまったのかと見間違えるほどでした。

この事例と、そのコメントをした人たちが決定的に違うのは、子供にするべきでない関わりをしてしまったと後悔や、反省があることです。

もし子育てがうまくいっていなかったとしても、このことは子供の心の成長にとって大きな意味を持ちます。
詳しくは、今後の続きの記事の中で参考図書をあげて述べますが、それがある分には大丈夫です。



では、話をA子のことに戻します。

子供は柔軟ですから、そのように負担の大きな生活であっても、それなりに楽しさを見いだしたりして乗り切っていきます。

習い事についても、習い事そのものが嫌なわけではないのです。
子供が本当に辛いのは、「お母さんが私にそれを望むから、私はそれを一生懸命頑張っている」ということを理解してもらえないことがとても辛いのです。

親から子への関わりが、「条件付きの肯定」になってしまっているケースでは、子供は親に認めてもらいたくて親の要求することを頑張ります。
このA子で言えば、親に自分を好意的に受け止めてもらうために、一生懸命親を喜ばせようとしています。

親が喜ぶと思うから、親の意向を汲んで親に話を向けられたときに「その習い事をしたい」と言ってしまいます。

しかし、親が「子供がしたいからやらせてあげたんだ」という姿勢でいたり、そう言ってしまうと、子供は自分の思いが親には届いていなかったという事実を突きつけられることとなります。

この状況での習い事そのものの精神的、身体的負担というのももちろんあるのですが、子供にとってはこのことが一番心をすり減らし、荒れさせることになるでしょう。


つづく。

少し所用があり、以降の更新が遅めになります。あしからず。
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● COMMENT ●

どこまでが自分でどこまでが親かわからなくなる

こんばんは。
私もかつて、親の習い事の押し付けに苦しんでいた一人です。
特に親のクラシック音楽趣味とピアノの習い事が負担になっていて、
何度も母親にピアノの鍵を閉められて
「いやなら辞めていいんだよ!」
と言われたり殴られたことがトラウマになっています。
中学や高校の部活や大学のサークルも親が喜びそうな吹奏楽や合唱を選んでいました。
最近までクラシック音楽が大嫌いで耳にすると吐き気まで催していました。
で、子供の側からすると、
ピアノを習うのは上達すると達成感があるし、
発表会の度に綺麗なドレスを買って貰えるのも楽しみでした。
もちろん、「いやなら辞めていいんだよ!」と言われても
「絶対辞めない!練習頑張る!」と泣きながら答えていたのですが、
これは本心から来たものか、
親に認められたくて言っていたのか今でもわかりません。
今でもピアノやオーケストラは気持ち悪くて聞く気になれませんが、
オペレッタやミュージカルなどは自分から鑑賞しに行くくらい好きですし、
親の言ったとおり、アイドルやアニメなどの「低俗な消費音楽」は食事かおやつかというとおやつに該当するもので、薄いかもしれないと思います。
自分が本当に音楽が嫌いなのかどうか未だによくわかりません。

いざ子供を持ってみると、子供(女児・2歳)も父親が聞いているロックミュージックや映画音楽などに強い関心を示し、
英語曲でもすぐに覚えて歌ったり踊ったりしていますし、
自分からせがんだりします。
(普通に童謡も歌っています)
子供が自分から大人の音楽に興味を持っているのか、
親の期待に答えてしまっているのかよくわかりません。
いっそ、子供が成長するまで大人の音楽は禁止にすればいいのかもしれませんが、
逆に「子供は童謡」というのも親の押し付けかもしれないと思うとますます混乱してきます。

親の希望に応える子育てをされた子供が親になると、
今度はどこまでが子供の意思や興味で
どこからが親の趣味の押し付けなのか境界線がわからなくなりますね。


数日前の記事において

他者から否定的に見られていないか、人の目が気になる。という旨の表現があり、大変共感しました。
こうしなければ。こうでなければ。〜しなくては周りの人に厳しい目で見られる。
本当に厳しく見ているのは周りでしょうか、、実際はその厳しい視線を自分自身に送りつけているのは自分なんですよね。メイクをきちんとして、一番高くて可愛い服を着て、大勢の人が集まるところに出かけても全く周りの目が気にならないのは、自分を肯定しているからですよね。
他人の賞賛は、他人の都合でしかないので不安定ですね。その人がいいと思ったことは褒められても、意に反することは嫌がられる。自分自身の評価が他人主体になると簡単に人格否定をしてしまう自分が出来上がりますね。

先日の記事に『過保護や過干渉、受容できない態度、子供を肯定的に見れない姿勢は、当の子供の姿を難しくする方に持って行きますから、ますます子供の行動はコントロールしづらいものとなってしまいます。
これは、子育てが難しくなる悪循環を生みます。』とありました。
コントロール=親の意のまま=支配?
という式が浮かんできたので、なんとか噛み砕いて理解しようと模索しています。大人同士でも相手をコントロールしようとすることは、エゴだと思っておりましたので。。筆者様の意図を読み解くことも、読み手に求められる能力と改めて感じます。

親は、大なり小なり子どものあるべき姿をイメージして、子どもに接していると思います。

子どものやることが、自分のイメージからずれていれば、口を出したり手を出したりして、自分のイメージに近づけようとします。

この行為が、子どもをコントロールすることだと思います。

なので、子どもを支配することとは、ちょっと違うと思います。


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