2017-06

隠れた貧困 vol.5 - 2015.03.08 Sun

こういった問題はあまり詳しいわけではないのだけど、つらつらとこの「隠れた貧困」のテーマを書いてきました。

実は、このことを書こうと思っていたわけではなく、別のテーマの導入のお話として頭の中でまとめていました。
ごく短く触れるつもりだったのですが、それを書き出したらいつのまにか長くなったというわけです。







保育園で働いていると、様々な家庭があることを知ります。
なかにはそれこそお金持ちがたくさん住んでいる地域の園もあるし、困窮した人が少なくない地域もあります。

でも、そういう地域で働いていたからと言って、すべての保育士にそういった貧困から引き起こされる家庭や、子供の育ちの問題が見えるかというとそうでもありません。

前回記事のリンクで紹介した、放送大学副学長 宮本みち子さんのおっしゃるように

「まずは周りの大人が『アンテナ』を張らなければ、問題は解決しないのです」

ということがとても大切だと感じます。




ここに

『ユニセフ調査にみる児童虐待と児童の貧困』 (法政大学大学院 星野信也教授)

という論文があります。
これなどを拝見いたしますと、

貧困が、教育格差、児童虐待・虐待死、家族崩壊、障がいや精神疾患、アルコール・薬物依存、などと相関関係があることがわかります。

またそこから、就職・所得格差、非行、犯罪(被害、加害とも)などへと派生する可能性も無視できません。




いま、中1リンチ殺人事件が世間を賑わせています。

こういった、事件が起こるとここ最近は決まってと言っていいほど、少年法の厳罰化という意見が席巻します。


人は怒りや、憤りを感じると、それの解消を求める心理作用が働きます。

「許しがたい犯罪だ。極刑を科すべし!」

そう思うのが人の常というものです。


そこに理由をつけようとすれば、「厳罰化による犯罪抑止力の効果」や「再犯率の高さから、罰を強化する必要性」といった根拠をくっつけることもできます。


でも、刑罰を強化するだけで、本当にこのような痛ましい犯罪がなくなるでしょうか?
再犯率が高いことの原因には、実際の更正のためのシステムに不備がありはしないのでしょうか?

犯罪や非行に走る子供を、そうなってしまう前にどこかで助けたり、支援することを考えなければ、問題の火種は少しも減りはしないのです。




「黒子のバスケ脅迫事件」の犯人が言っていました。

「社会と無縁の人間である自分たちを死刑にして命を絶ってもらうために、今後も無差別な犯罪を犯す若者は増えていくだろう」

そのような人の前には、刑の厳罰化などさして意味はありません。
衝動的な犯罪をおかす人は、いちいち捕まったときの量刑を考えながらしているわけではないのです。


貧困への対策や、家庭支援、児童虐待への対策が適切なかたちで実を結んでいれば、そもそも犯罪に走る人を作り出さずに済むかもしれないのです。
そしてもちろん、犯罪の被害に遭う人の数も。


事件が起こるたびに、「あいつが悪い」と犯人を断罪することだけで満足していたらいつまでたっても同様の犯罪はなくならないでしょう。



近現代的な国家では、人々の生活に対して国や行政などが少なからず責任を負っています。

人が困窮して餓死をしたり、虐待によって子供が死亡させられたり、子供が適切な教育の場からドロップアウトして非行や犯罪に走ってしまうことは、その人個人の責任によるだけではなく、「社会システムの不備」といった問題があると言えます。



日本ではなかなか生活保護の受給がされないこともあります。

最初に申請した段階では受けてもらえず、病気や精神疾患を負ってどうにもならなくなってようやく生活保護が受理されるというケースも多いそうです。
所持金が20円しかないのに、受理を拒否されたケースなどもありました。


最初のときにその支給が始まっていれば、その人が生活基盤を整え、就業に必要な訓練なり、就職の斡旋などを受けて、安定し早期に生活保護の必要がなくなるといった可能性も高いのに、いたずらに支給を渋るあまり、返って生活保護から抜け出せない状況などを生んでしまっています。



生活保護は、「個々の人間を尊重する」という、現代的な人間観に基づいた社会保障というものです。
けっして「貧しい人間にあたえる施し」といった意味合いのものではないのです。

生活保護の話で有名なのは、『ハリー・ポッター』の作者のJ・K・ローリングです。

イギリスの人ですが、この人は生活保護をもらい母子家庭で子供を保育園に預けながら、喫茶店に通いコーヒーを飲み執筆をして、あの世界的ベストセラーを書き上げました。


このイギリスと日本では、生活保護に対するとらえ方がまったくと言っていいほど違うのです。

まだまだ、日本にはこういった困窮したときに社会的に扶助していくシステムに、多くの改善の余地があると言えるのではないでしょうか。
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● COMMENT ●

No title

本当にまさにその通りだと思います。
川崎の事件によって、少年法の改正や厳罰化が声高になり、ネット上でも、加害少年の顔写真をさらすなどの行為がさも当然受けるべき罰であると言わんばかりの状態であることに、とても違和感を感じていました。
私も、報道からの知識しかないのですが、加害少年の父親のコメントからも想像するに、「育ち」に問題があったであろうという想像を禁じ得ません。
弱い者がさらに弱い者を攻撃するという社会では、「その弱い者を作らない」という方向でしか、問題は解決しないのだろうと思います。

おとーちゃんさんのブログを読み、書籍を拝見し、育児ノイローゼ気味だった私も、子供との愛情の交流ができているなという手応えを感じるまでになりました。始めは大変でしたが…(^^;
例えがおかしいかもしれませんが、試行錯誤しながら筋トレを繰り返し、やっと、身体というか、筋肉の使い方が分かってきた、というような感じです 笑
そして、その課程で、自分自身にもOKが出せるようになってきたんです。今では、子供は、私の人生を変えてくれた宝だと感謝しています。
だからこそ、世の中に、幸せな親と子供が増えるように願ってやみません。
先程の事件でも、不幸な子供の前には不幸な親がいるのだと思います。
もっと早い段階で、親も含めて子供の支援をしていく方法はないのでしょうか。

いつも記事をありがとうございます。私のようにおとーちゃんさんに救われているママがたくさんいることと思います。ママが救われるということは、子供も救われるということ。
本当にお忙しいとは思いますが、これからもどうか頑張って下さい!!!


深い記事をありがとうございました。
子供の育ちの視点でみれば、「水際作戦」と「無視・ごまかし」、「断罪」と「感情的に叱ること」、「格差社会の肯定」と「"出来る"のみを目指す育児」…名前は違えど、その心理にどれだけの差異があるのだろうかと考えさせられました。

皆が「力も教養も無いから支配・排除していいんだ」という、
社会的弱者だけでなく、子供にも、犯罪者にも対する、隠れた選民意識の芽に気付いて、
その対になるもの(かわいい子を育てる関わり等)を一つでも多く積み上げていって、
初めて10年後20年後の社会が変わり始めるのではないかと感じました。

川崎の事件から特に、なんとなく考えていました。貧困や人間関係などで、ドロップアウトした人たちを受け止めるセーフネットはないのかと、子供に安心を与えられないのかと。
そんな折、あるテレビ番組で「子ども食堂」というものを特集していました。これだ、と感じました。
今は私も小さい子どもを育児する身でなかなか余裕もないですが、いつかこのような活動がしたいと、夢、目標を持つことができました。
こんな活動が広がれば、少しでも救われる子どもが多くなるのではと期待しています。
http://toshimawakuwaku.com/
団体の会員でもなければ宣伝のつもりでもないのですが、不適切でしたら削除してください。でもよかったらおとーちゃんさんにも見てほしいです。

いつもブログを楽しみに拝読しております。実家の母にも読んでもらおうと、書籍も買いました〜♡

黒子のバスケ事件の犯人のこと、私も以前AE◯Aやテレビの特集で知り、犯人の生い立ちと犯行後の本人の出会いや気づきを知りなんとも言えない気持ちになって切なくて泣けました。
恵まれているとは言えない家庭に産まれたとき、金銭的にもそうですが精神的に支えられるシステムはもう学校や地域社会に望めない時代ですよね、、二十四の瞳のような、親身になってくれる先生にあたることはよほどラッキーでないと、、

今、同じ団地に少し気にかかる子供(小二)がいるのですが…(母子家庭で、その母親が鬱?のようです)
団地が同じだけで子供(二歳)とも年が離れている自分に何ができるのだろうかと考えさせられます。
お金も子育ても他人が口出しできるものではない分、辛いですね。

おとうちゃんは『プレシャス』というアメリカの映画はご存知ですか?
アメリカの貧困層の子供にさした一条の光を垣間見た気持ちになります。日本にも少しでも近いサポートシステムを
導入してほしいと思わずにいられません。


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