2017-03

隠れた貧困 vol.4 - 2015.03.06 Fri

多くの子供、家庭と関わっていると、子の育ちというのは、家庭のあり方、親の就労と非常に密接な関係があることを感じさせられます。









仮に、母ひとりで保育園児を抱えた人が、生活に不安があって生活保護を申請しようとしたけれども、「女性ならばより好みしなければ、あなただって十分稼げるでしょ」などと、窓口で追い返されたとしましょう。


日本のいまの社会では、「生活保護をもらうことは恥ずかしいこと」といった先入観が少なからずありますので、申請しに行く人がすでに負い目を感じていることも多く、そのように突っぱねられてしまうと、そこで食い下がって「私には必要なのです、きちんと受理して審査して下さい」とはなかなか言えません。

そもそも、受理や相談も受けずに追い返すことが、違法であるという認識も多くの人は持っていないでしょう。

たいていの人は「私が悪いのだ」とそのまま引き下がってしまいます。



その人がもし、高度な教育という「資本」を持っているのならば、女性一人で子供を預けながら、しかも将来の生活の蓄えや、子供の学費など育てるのに必要な資金を貯めながら生計を立てていくことができるかもしれません。


もしくは、
夜の商売に就きながらも、子供をきちんと養育してそれなりに一人前に育て上げる人もいるかもしれません。

または、いくつもの仕事を掛け持ちしながら、苦労もそれなりに多かった。つつましやかではあったけれども、温かい家庭を築いた、という人もいることでしょう。


そのようなケースでは、あとで大きくなった子供から「うちの母ちゃんはすごい。女手一つで苦労しているはずなのに、泣き言一つ言わず自分のことを育ててくれた。本当に尊敬している」と言われるようなことになるでしょう。


こういう話も実際にあって、それらはそれを聞いた人の心に感動や勇気を与えてはくれますが、こういうことは「美談」というものです。

場合によっては、そのような美談が世間にあるからといって、「あなたたちもこのように努力して、頑張っていきなさいよ」と困窮している人に、自助努力を説く人もいます。


しかし、実際にはそのようにうまくいく例ばかりではありません。

母親がいくつもの仕事をかけもちして、忙しさ、疲れ、お金や将来への不安・心配、困窮すればするほどついてまわるような人間関係の問題などを抱えて、子供の世話をする余裕もなく、それどころか子供に八つ当たり的な感情を向けたり、それがエスカレートして虐待になったり。そのような事態のほうが容易に起こりうるのです。

水商売についたけれども、困窮しているという足下を見られて、「衣装代だ、まかない費だ」などと就労に当たってあらかじめ借金として負わされて、それをかたに不当な労働をしいられたりするといったこともあります。

当然このような就労のさせかたも違法行為ですが、知識・教育がなければそれにおかしいと思えませんし、思ったとしても訴えるべきところがわからない。訴えても相手にされない。金銭・再就職の不安でひどい状況でも耐えて働かなければならないといったことが引き起こされてしまいます。



「生活のため」との理由で、子供への養育・教育が後回しにされていってしまうと、子供は健全な育ちを得られないことが多くなってしまいます。

生活の大変さから、ネグレクトや虐待になってしまえば、それがなおさらなのは言うまでもありません。


本来そのような事態にならないように、社会保障があるのですが、残念なことにそれがまだまだ適切に機能しておりません。


こういった状況が増えてくれば、その家庭の子供が適切に教育を受けられなかったり、教育内容が身につかなかったりすることが引き起こされます。それはまたその子にも就労の困難さ、生活の安定の困難さとして、貧困の拡大再生産を伝えてしまいます。
また、以前に述べたように犯罪やそれに類するようなところへからめとられてしまう可能性も高くなります。

それがひいては、社会全体を住みにくいものへとするリスクを上げていくことにつながります。



外国へ行くと、
「街のあの地域へは行ってはいけないよ」
「その盛り場は何時以降いては危ない」
「その辺は、女性一人では近づかないほうがよい」

といった場所が必ずと言っていいほどあります。


日本ではいまのところ、そこまで露骨なところはそう多くはありません。
しかし、弱者へ冷たく、人の困窮を救えない社会になっていけば、そういった社会状況を生んでしまうリスクは確実に上がっていきます。

我が子が将来住みよい社会で過ごせるように、現在の大人は少しでいいので、そういったところへも思いをはせる必要があるかと考えます。


最近、放任や放置子といった事例が増えています。
これらが単に親の怠慢からではなく、そういった生活の困難さが背景にあって引き起こされているケースだとしたら、そのような事態になってしまう前に適切な援助の手がさしのべられていれば、そうはなっていなかったのかもしれないのです。


このようなことに対して、「地域で助け合ったりすることがなくなったから引き起こされているのだ。もっと互いに助け合いましょう」といったことを言う人もいます。
たしかに、それもそうなのでしょうけれども、これまでに述べたような生活保護・社会保障の不備などのハード面をそのままにしているのでは、「自分たちで勝手にどうにかしなさいよ」と投げ出しているのと変わりません。
それでは社会はよくなっていかないでしょう。

少なくとも、安易な感情論による生活保護へのパッシングなどは、回り回って自分や自分の子供へと返ってきてしまうことを認識する必要があるかと思います。


参考 『道具が買えなくて部活を辞める・・・「家が貧しいから」と言えない日本の子どもたち』
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