2017-04

保育施設での増加する死亡事故と保育のあり方 - 2015.01.21 Wed

保育施設での死亡事故が2008年より、年々増加し続けています。
特に認可外保育施設での事故が、その多くを占めています。

そのすべてが施設側の過失というわけではありませんが、やはり過失や不注意による事故が増えているのも事実です。


事故の経緯などを調べていると、プールでの水死など施設側にも過失があるであろうことが明らかなものでも、過失のないただの事故であるとの施設側の主張で裁判になっているものなども少なくなく、普段から責任を持った保育ができていたのか疑問に感じるようなケースもあります。








ここ最近になって、相次いで自治体が保育士の給与改善に乗り出し、補助金を出したり、手当をつけたりすることで給与の底上げをするという話があちらこちらで出ています。
また、保育士試験を年2回にしたりといった、保育士増加に向けての動きもあります。


こういった動きはもちろん喜ばしいものではあるのだろうけれども、僕としては「ただ増やして終わり」になって欲しくないと思います。


保育というのは、人の命を預かり、人の成長や人格形成を助ける重要な仕事です。
ただ数時間預かって、親元に帰せばいいというだけの仕事ではないのです。

そこで最も重要なのは、人材の質です。
もう、これに尽きるといってもいいほどのものです。


こういった話をするとき、よく「経験」がということが出てきます。
しかし、経験だけでもいけません。
長い年数やっていればいい保育ができるというものでもないからです。

それにともなう「知識」「学習」も必要です。


「経験」と「知識」があったとしても、それだけでもまだ足りません。

「子供の姿」、子供を取り巻く「家庭」や「社会のあり方」というのも刻々と変化しているので、自分が持つ経験と知識にあぐらをかいていたら、遠からず適切な対応というのができなくなってしまいます。

自分がそれまでに獲得してきた経験や知識に依存するあまり、子供に適切な援助ができなくなっているのに、「自分は正しい」と信じて疑わない人も少なくありません。

「経験」や「知識」に加えて、「問題意識」ということが実はとても重要なのです。


ある子供へ援助するに当たって、

「この子供の姿はどういうところから来ているのだろう?」
「どのような関わりをしていけばよいだろうか?」
「その保護者はどのような考えを持っているのか、それに対してどのようにアプローチすればいいのか?」
「自分のこの対応は適切なのか?」

などなど、自分のやり方・価値観に当てはめるだけでなく、客観的にものごとを捉え、それを考察し、より適切なアプローチを見いだしていくというスタンスが必要です。

その根底にあるのが、「問題意識」というものだと考えます。


また、問題意識の源泉となり、それらを筋の通ったものとするためには、確固としたビジョンも必要です。
それは「理念」と呼ばれるものです。


これらがあって初めて、子供を安心して預けることができ、さらには「保育」というものが社会的に意義のあるものと言えるのではないかと思います。



保育士の仕事は(当時はまだ「保母」でしたが)、かつて「腰掛け」と世間には認知されていました。

「腰掛け」というのは今ではすでに死語になっているかと思いますが、結婚までの暫定的な居場所を意味し、寿退職で数年でやめていくのが当たり前と考えられている仕事を指してそのように言われていたものです。


以前は、まだ社会や家庭にも余裕があり、子供たちもそれなりに受け止められていて、今ほどには保育に困難さを感じることはなかったことでしょう。
一部の手のかかる子に対しても、叱ったりすることで抑えつければなんとかなってしまったりということも多かったはずです。

しかし、現代はなかなかそのようにはいきません。


その状態で、「経験」や「知識」、「問題意識」、「理念」の欠いた保育が行われると、様々な不適切が起こってしまいます。

死亡事故や重大事故。
先日、韓国の保育施設での子供を殴り飛ばすセンセーショナルな映像が世間を賑わせましたが、日本でだって無縁とは言い切れません。
あそこまで露骨な暴力でなくとも、「指導」の名を借りた体罰や、保育士個人の気分次第で子供を邪険に扱ったり、疎外したりということは、簡単に起こりうることです。



人が増えるときほど質は下がりやすいです。

2008年から、死亡事故が増加しているのも、このところの保育施設の急激な増加と無関係ではないと僕には感じられます。


保育には「質」があるということを多くの人に知っておいてもらいたいと思います。
特に政治家や行政の人たち、保育施設の経営側の人たちにはそうです。
そして、もちろん現場の保育士も。
そのためには、子供を預ける保護者の方を含めて、より多くの人がこのことを知っておく必要があるでしょう。

待機児を解消すればそれで問題解決になるのではありません。
「ただ数だけ増やした」になれば、その後に待っているのは不適切な保育や、重大な事故の増加という不幸な現実になってしまうでしょう。

保育士や保育施設が増加している今だからこそ、このことをお伝えしたいと思います。
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● COMMENT ●

質は本当に重要だと思います

4月から幼稚園入園の娘がいます。
私は横浜市在住で、その中でも待機児童が一番多いと言われていた区なため、保育園激戦区です。
待機児童対策を実現し、私の家の近くにも新しく3件保育園ができました。随分前からある保育園は2件あります。
私は平日は毎日近くの公園に行くので、公園では必ず保育園の子供たちと一緒になります。
新しくできた保育園の先生達の対応には正直驚かさせられる事が多く、園の数が増えただけで質の悪さをいつも感じます。
質の悪さが原因なのかはわかりませんが、新しい保育園は、子供達のトラブルも多く見かけます。
三件共に認可保育園なんですが…。

正直、素人が保育しているように感じます。
私でさえ気をつけてしないようにしている声かけなど、バンバン聞こえて来ます。
二人目ができた時は保育園に預けて働く予定ですが、とても不安です。

No title

近所にある有名英語スクールが、実質保育所のように長時間幼児を預かっています。英語で子供の相手をするスタッフは笑顔が見られず、子供の相手をするのが好きなようには見えません。
公園にも連れ出しているのですが、これって法的な問題はないのでしょうか?
そこのスクールには、午前中保育所に通ってる子が午後から通って夜までいるそうです。
もちろん送り迎えもスタッフが代行するので親の手間はありません。
保育所でもない施設が子供を預かってる現状は大丈夫なのでしょうか。スイミングクラブでの事故など、まさかという事もあるので。
おとーちゃんさんのおかげで、保育の専門性が必要な事がわかりました!本も購入しましたよ〜!

「保育の質」悩みの1つです。

初めまして。以前から拝読させて頂いており、先日出版された本も購入いたしました。
とても勉強になることばかりで、はっとさせられることも多かったです。
私は短大を卒業してから6年ほど保育士として務めていました。
仕事をしながら出産、育児を経験し、引っ越しを機に今は別の仕事に就いています。
引っ越し後に再び保育士として就職したのですが、これまで培ってきた知識があったためそこでの保育の仕方に耐えきれず…
新たに別の保育園に努めることの難しさを感じ、一旦別の世界を見てみようと職種を変える決意をしました。

娘は来年小学生になります。保育園を離れることの寂しさからか、
「ママにもう1度保育園の先生になってほしい」と最近よく言われるようになりました。
私自身、保育園と関わることがもう一切無くなってしまうと思うと寂しさもあります。
小さな子どもたちと関わりたい、悩んでいる保護者の方の手助けをしたいという気持ちもあります。
家族からも、もう1度保育士にならないの?と言われ、揺れています。
しかし、娘の通う保育園でも一部の先生の言葉がけに疑問を持つこともあり、
採用してもらえる保育園があったとしてもまたその保育園の方針や保育士の対応に疑問を感じてモヤモヤしてしまうんじゃないかという不安があります。
また、経験はあっても就職したての私が声を大きくして言えることではないですし、
郷に入っては郷に従えのような雰囲気を持つ保育園がほとんどだと感じています。
まだ何も知らない学生時代から就職するのと今とではかなり違うものがあり、悩んでいます。

おとーちゃんの言う「人材の質」も悩みの1つです。最初に勤めた保育園では良い先輩方に恵まれましたが、
どこもそうとは限りませんし、むしろ上の地位にいる方に問題があるということも少なくないと思います。
新人教育が年々難しくなっていくのも、私だけでなく他の先生方や園長先生も感じていました。
保育士の給料が上がろうとも、試験が年に2回になろうとも、人材の質を上げることは重要視されていないと感じます。
「ただ人材を増やしただけ」「保育園を増やして待機児童を減らしただけ」にしないでほしい、多くの保護者の方や保育士はそう願っています。
もちろん、素晴らしい保育を行ってる園や、新人保育士の教育をしっかり行っている園もあるはずです。
そんな園に出会えたならばぜひとも働かせていただきたいですが、現状を考えると自宅付近でないと厳しいですし、
そもそも採用される園があるかどうかも問題なので、ぐだぐだと不安要素ばかり考えてしまい、先に進めないでいます…。
正社員の保育士として勤めるのであれば、年齢もギリギリなので気持ちが焦るばかりです。

相談は受け付けていないとのことですが、どこかに吐き出したくて書き込みをさせていただきました。
保育士不足も問題視されていますが、1度離れてから再び保育士として今の保育の現場に戻るということは、とても勇気がいります。
安心して務められる、そして安心して子どもを預けられる保育環境が全国に広まって欲しいと心から思います。
長々と失礼いたいました。

No title

書籍出版、重版おめでとうございます!(遅ればせですいません)
本屋に行く暇がなくてまだゲットできてませんが…。

大量に採用するときは質が低下するというのは、確かにその通りですね。新卒だけでなく、理由あってやめている素質のある経験者も是非この機会に吸い上げて欲しいなと、親としては思います。
上のコメントでコメントされていた経験者のような方には、できれば保育の世界に戻っていただけたら、そしてそのような方がやり甲斐を感じる保育業界であればいいのにと、願ってやみません。
(勝手なこと言っていてすいません)

保育園という狭い幅の年代の子供たちだけを見ていると見逃しがちなのでしょうけど、その後の行く末の影響まで考えた保育がなされるといいなと思います。
特に、年齢的に吸収も変化も早くて、大人になってから社会的に不適応になるかいなかの鍵を握っている年代。
この年齢での対応が、人生を大きく変えるのだという自負がもてるような職場環境と対応に是非なってほしいなと思います。
質が重視されるようになれば、その辺りがついてくるようになるのでしょうね。

国としてもここを手厚くして、ちゃんと対応すれば、生活保護費や医療費が減るからプラスになるのにと思うのですが…。

とりとめもない感想ですいません。
更新楽しみにしています。

初めまして。以前からこちらを拝読させていただいてます。
この4月から上の子を幼稚園型の認定こども園、下の子を育休明けで保育ママさんに預けています。
下の子の産休直前に引っ越しをしたため、上の子は年度途中では認可に入所できず、育休中は上の子も自宅保育にしました(これは結果、とてもよかったです)。
上の子は、教育方針の気に入った近所の幼稚園に早々に決めましたが、下の子どもの入園申し込みのときのことです。保育園=園庭のある認可保育園が一番だと思い込んでいたのですが、申し込み締め切りの翌日、近所の公園で子どもたちを遊ばせていると、近くの保育ママさん・在園児さんと一緒になりました。補助の先生含め2〜3人で5人のお子さんをみているそうで、そのときの保育ママさんの温かく穏やかで、1人ひとりのお子さんをしっかりとみて対応している様子、お子さんたちのとても伸び伸び穏やかな様子にとても感銘を受けました。下の子は早生まれということもあり、性格的にも家庭的保育の方が合っているかもしれないと思い、その足で入園申請内容を変更し、2次募集でなんとかその保育ママさんのところに入所することができました。ベテラン保育ママさんの受容の対応で、下の子どももすぐに先生に馴染み、今のところ安定しており良い保育士さんとのご縁に恵まれたと思っています。大きな認可園はもちろん安心ですが、「保育士さんの質」というものをこの一件ですごく実感しまして、ついコメントさせていただきました。


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