2017-04

子供の心にぽっかり穴を開けてしまう Vol.2 - 2014.09.07 Sun

衝撃の事実というのは、それまで一度もこの母親がAに絵本を読んであげるということがなかったということです。「絵本を読んであげなかった」というだけではなくて、膝に座らせて本を読んであげたりするといったことを子供にするものということ自体をこの母親はきちんとは知らなかったのです。これは比喩的な意味や、「単に苦手だからしてこなかった」という意味ではありません。本当に子供に笑顔を向けたり、優しく話しかけたりするということを理解していなかったのです。
絵本を読むことをしらなかったというのはそれの象徴的な出来事としてあげています。

そこからいろいろ話を聞くと、子供をかわいがったり楽しく一緒にスキンシップを持ったりという関わりを子供にするということそのものを認識していなかったのです。なので当然ながらそのようなことを子供にもしたことがなかったとのこと。






Aはこれまでの生育歴において、受容や甘えというものをほとんどまったく知らず、ネガティブな行動をすることによって母親の目を向けてもらうことで育ってきたのでした。

こういうケースでも父親が子煩悩であったりしてなんとかバランスがとれる場合もありますが、この家庭では父親も母親と似たタイプで感情の表し方などもとぼしい人でさらに子育てには無関心であったので、子供の養育はほとんど母親まかせでした。


Aはネガティブ行動のほかに、母親の過保護やいいなりになってしまうことも受容の代償行為にしていたろうと思われる。
しかし、母親はAのことをいつも「〇〇ができない子」という視線でしか見ておらず、自己肯定感を高めてあげるような関わりもしていないので、そういったものを受容の代わりとして引き出しても、「満たされた気持ち」として蓄積されていくことはそう簡単ではない。

母親に子供の話をしても、よくそこまで悪く考えられるなーと驚いてしまうほどAの行動を悪い方へ悪い方へととってしまう。
自己肯定感や「満たされる」ということに関して、このAほど低い子というのはそうそういないだろうと思われる。
そう考えるとむしろこのレベルの姿でとどまっているのは、このAの持ち前の個性や幼さが有利に働いていた結果なのではないかとも考えられる。

それからいろいろあってしばらくたち、母親の方から自分の関わり方を変えてでも子供の姿を安定化させていきたいという気持ちがでてくる。
(それまでにも「受容」などについて話はするも気乗り薄であり、さして実践した様子もなくAの姿にほとんど変化はなかった)

母親はそれまでAの姿に対して、「あきらめ」や「うんざり」という気持ちを強く持ってしまっていた。
園での生活が安定してきたり、保育士が「素直な甘え」「かわいい関わり」を出せるようにAに対して取り組んできたことで、少しずつAの姿にも変化が現れてくるようになった。
母親はそこから「関わり方」によってAの姿が良い方へと向けていけるのだということに希望が持てるようになった様子。



この段階になってはじめてきちんと、Aの姿がなぜこのようになっているのか、どういった関わりがこうしてしまうのか、しまってきたのかということを母親にも理解できるように伝えていった。
受容不足、自己肯定感の低さのためにネガティブな行動、他児へちょっかいを出すような行動、人が嫌がることを進んでしまうこと、大人の言葉が聞けなくなっていること、保育園に入って安定した姿がでるようになったのは「信頼関係」を作ったからであり、「叱る」「怒る」でそのようにできているわけではないこと、子供自身がもともと「落ち着きのない子」「聞き分けのない子」「悪い子」ではないということ。

この母親はAのことをそういった、「A自体に問題があるために適応的な行動ができないのだ」というような見方をしてしまっており、働きかけることを無駄なことなのだというあきらめを持ってしまっていた。
しかし、子供の様子に目に見える変化がでてきたことでその「あきらめ」に変化がでてきた。

そこからさらに時間をかけて話を聞き、園側からもAにもたくさんのよい部分があること、本当は大人に認められたいと思っていてもそれが素直にだせなくなっていること、どのようにしていけば良い姿を出せるようになっていけるかといったことを伝えていく。
また排泄が確立していないことも、そういった精神的な面と無関係でなく失敗を叱っても良くなるわけではないこと。むしろそのことが子供のネガティブな行動を増やしてしまうことなども伝える。

母親はこのことを十分に理解してくれるのだが、ここからもさらに対人関係の難しいところでそれだけではすんなりとはいきませんでした。

つづく。

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● COMMENT ●

No title

このお母さんの気持ち、私にはとてもよくわかります。まさに、私は少し前までこんな母親でした。

でも、このブログでおとーちゃんさんの考えや色んな方の投稿、また色んな本、夫、まわりの人、そしてなにより息子が少しずつ成長して変化いくのを感じて、私の接し方が息子にものすごく反映されている、自分がどうすればいいのかがわかってきました。

我が子は人に害を加えるというのと反対方向に、もう関わらない、なにもしない、あきらめる。お母さんにどうやったら叱られないか。そんなことばかりを考えていたのかも……
私がまわりの子を見て、比べて、なんであんな風にできないんだろう、なんでうちの子はこんななんだろう、息子には口に出していっていませんが思いきり私の顔と口調に出ていたと思います。

我が子の心には穴が開いていたのかも。
でもまだ、空いているかもしれません。
わからないです。

でも、この記事を見て、このあとお子さんやお母さんが周りのどんな働きかけでどう変わっていったのか、ものすごく興味があります。

私も、息子の心の穴をうめてやりたいです。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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