2017-06

『子育てと虐待』 Vol.2 - 2010.02.22 Mon

今回のテーマとはまったく関係ありませんが、
みなさん、スキャットマン・ジョン(1942-1999)を覚えていますか?
15年くらい前日本でもCMに出演したり、独特の歌唱でいまだに忘れていない人も多いのではないでしょうか。

「自身の吃音を矯正するための訓練としてスキャットを始め、それで52歳になって歌手デビューした」とは僕も当時知っていたのですが、あまりちゃんと聴いたことはなく面白い歌を歌う人だなくらいに思っていたのですが、最近この人について偶然知る機会があり改めて聴いてみると、その歌にこもる魂に涙が止まりません。
ご自身が吃音というものを生涯にわたって抱えており、それ故に障害を持つ人、差別される人、そして全ての人間に対する深い共感と理解を持つに至ったのでしょう。
僕は「人間愛」といったものを安易に信じない人間ですが、この人は宗教的な道徳心からでもなく、既成の道義心に乗っかったわけでもない、本当に自身で獲得したその深い人間への共感は「人間愛」とでも言うしかないものだと感じます。
メジャーデビューしてたった5年で亡くなってしまったそうです。もっと早くに知っていたかったです・・。



では前回の続きです。
「虐待」にはいくつか種類があります。大きく分けるとそれは以下のようになります。


1 身体的虐待

2 精神的虐待

3 ネグレクト(保護の怠慢、拒否、放任)

4 性的虐待


「ネグレクト」とはあまり聞きなれない言葉かもしれません。育児や保護をしなくなったりしてしまうことです。

以前、母親が2歳の女の子を家に置きざりにして友達とスノーボードに泊りがけでいってしまったという事件がありました。直接暴力を振るったりしたわけではありませんが、こどもを養育する義務に反しているので完全に犯罪です。
コンビニのおにぎりを2個おいていったそうです・・・。

また、そのこどもに直接暴力を振るわなくても、夫婦間のDVや兄弟への虐待などを目の当たりにさせることも間接的な虐待であり、このネグレクトに該当します。

直接しているわけでないので、虐待という認識が薄くなってしまっています。
また、DVすら取り締まれない現行の法律では、これを「虐待である」と当事者に対して強く言えないことにも非常に問題があります。

「性的虐待」はようやくこのところ明るみに出てきましたが、それでも判明しているものの軽く10倍はあると言われています。直接的な性的行為のみだけでなく、性器をさらさせたり性的部分に関してはずかしめたりすることも広義の「性的虐待」になるので、女の子だけでなく男の子が対象とされることもあります。また、異性間だけでなく同性から受けることもあります。



虐待に関して公的に扱うところは各自治体が設置している「児童相談所」です。
「児童相談員」という人たちがケースワーカとして対応しているのですが、今では各相談員が軽く100件をこえるケースを抱えておりオーバーワーク状態、きめ細やかな対応がなかなかできなくなっているのが現状だそうです。

精神的にもいろいろ麻痺してしまい、「刃物をもちださなければそんなの虐待じゃない」と言い出してしまう人もいたそうです。本当に大変なお仕事のようです。ある自治体では相談員のなり手がおらず、一般から公募したところもありました。

そこでは虐待のケースが持ち込まれると、その子の生育歴はもちろん、両親さらにその両親(つまり祖父母)の生育暦までさかのぼって虐待の原因・遠因をつきとめ、その子に最良な対応を考えていきます。

多くの場合は家庭で虐待の防止、減少につとめるのですが、どうにもそれが無理だと判断されると「乳児院」や「児童養護施設」(かつての養護施設、さらにかつての孤児院といったものです)への入所を勧められることもあります。
また、こどもに生命の危険があるとみなされたときは、親に断ることなく秘密裏に「児童養護施設」へと入所させることすらあります。

僕の直接知っている事例では、こどもが小学校に来ているときに児童相談所が手配して、養護施設への保護を決めたということがありました。保育園にいるときから虐待の事実は把握されていて対応してきたのですが、小学校2年のときにとうとう生命の危険がある、と強制措置されたものです。

他の外国ではこんな事態になったら親や保護者は刑務所にいれられてしまいますが、日本ではなんのお咎めもありません。



2歳以下であれば「乳児院」3歳以上であれば「児童養護施設」へ入所になります。
かならずしも虐待されてきた子ばかりでなく、両親との死別、病気や職業による養育困難でももちろん入所を措置されることがあるのですが、いまでは虐待を理由として入所しているこどもも少なくありません。


ごく小さいときから施設で育った子には、「ホスピタリズム」(施設病)という現象の起こることがあります。
最近一般的になってきた「ホスピタリティ=おもてなしの心」とは語源は一緒ですが意味はぜんぜん違います。

特定の大人に愛着を持ち、愛情をかけてもらうことがなくなってしまうと、身体的、知能的発達に著しい遅れがみられる現象のことです。
比喩的なものではなく実際に成長がとまってしまったり、あきらかな遅れがでてしまうのです。


僕の乳児院で働いていた友達は、生まれたばかりで入所してきた(出産した病院から直接来たそうです)赤ちゃんの担当になり3歳になるまで大事に育て、そのときは知能テストでもはるかに標準を超えていたのに、3歳から養護施設に移設されてからは明らかに発達に遅れがでてきたそうです。
3歳まで我が子のように大事に育ててきた子がそうなってしまうのを見るのはほんとうにつらかったそうです。
(法律にそって措置されるので3歳を超えて乳児院にはいられないのです。どうしても別れることになってしまいます。)


アメリカでの事例ですが、赤ちゃんのときに親にフライパンで焼かれ施設に保護された子がいましたが、もう大人への信頼をしめすことはなく、何年たってもその赤ちゃんのときの大きさから成長しなかったという実例もあります。

優しい人間的な関わりとか愛情っていうのは、たんに精神的なものではなく人間の成長に不可欠なものなのですね。


最後に一つだけ知っておいて欲しいことがあります。
日本では里親が非常に不足しています。「里親」っていうと養子縁組とかずっと責任もって養育すると思ってしまいますが、そうではなくそういった施設にいる子に家庭の雰囲気を伝えるために短期間だけ預かる「短期里親」というものがあるのです。ほんの数日からあります。
「乳児院」「児童養護施設」では切実にそれを必要としています。「児童相談所」から申し込むことが出来ます。

このブログを読む方はご自身子育てしている方が多いので、できないと思いますしまたやって下さいとお願いしているのでもありません。ただ、知っていてください。
登録しているかいないかは別として、いまではアイバンクや臓器・骨髄バンクを知らない人がいないのと同じように、ただ知っていて下さい。
それだけでちょっとだけこの社会がよくなるはずです。


「虐待」について今日はここまでです。書こうと思えば身近にある例などまだまだいくらでも書けるのだけど、内容が重いので連続して書く自信がありません。またそのうち更新するかもしれません。

今日も長いこと読んでくださって本当にありがとうございます。では、おやすみなさい。

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● COMMENT ●

No title

ウチの息子が産まれてから、幼児虐待のニュースを聞くと、どうしても理解できない。私も子育てしてきて、本当に本当に大変な時期はあるけれど、虐待だけは思いつかなかった。叩いて叱ることも無かった。
理由はひとつ。
そんなふうに怒っても子どもの心には“恐怖”しか残らないと思ってるから。
保育園の先生が、「ちゃんと話せばわかる子ですよ~」とアドバイスしてくれたのも良かったのかも。

でも、やっぱり虐待ってあるんですよね。大なり小なり。
何とかならないんでしょうかね~。
親の心の問題でしょう。
改めて、考えさせられました。

No title

スキャットマン・ジョンって名前見てもしかしてあの歌の人?と歌が思い浮かびましたがやっぱりそうでした。
吃音を矯正するためにスキャットをされていたとは知りませんでした。

デビュー後たったの5年でなくなっていたんですね。
それも知りませんでした。

児童相談所も問題が起こるたびに批判されたりしていますが、相談員の方も大変なんですよね。
いつもそういう批判を聞くたびに胸が痛くなります。

短期里親!!
初めて聞きました。
マスコミもくだらない番組ばかり放送してないでそういう情報も発信してほしいものです。

みんしゃみーさん

> ウチの息子が産まれてから、幼児虐待のニュースを聞くと、どうしても理解できない。私も子育てしてきて、本当に本当に大変な時期はあるけれど、虐待だけは思いつかなかった。叩いて叱ることも無かった。
> 理由はひとつ。
> そんなふうに怒っても子どもの心には“恐怖”しか残らないと思ってるから。
> 保育園の先生が、「ちゃんと話せばわかる子ですよ~」とアドバイスしてくれたのも良かったのかも。

そう思えればいいのですが、なかにはつよく叱ること叩くことで支配してしまおう、するべきものって考えてしまう人も少なくないのですよね。
どんな子もちゃんと段階を踏んでいけば「話せばわかる子」に育つのですけどね。そう思わない、考えられない人が多いのが残念です。


> でも、やっぱり虐待ってあるんですよね。大なり小なり。
> 何とかならないんでしょうかね~。
> 親の心の問題でしょう。
> 改めて、考えさせられました。

いま、いろいろ大変な時代でしょ。親も経済的にも心配なことが多かったり、職場でも大きなストレスを感じながら仕事してたり。それはそれで大変だし、つらいことだとは思うのだけど、人によってはそういうものを我が子にぶつけてしまう人がいたりするので、ただ子育てとか家庭だけの問題でもないんだよね。そこがまた難しいとこだね。

さっちんさん

> スキャットマン・ジョンって名前見てもしかしてあの歌の人?と歌が思い浮かびましたがやっぱりそうでした。
> 吃音を矯正するためにスキャットをされていたとは知りませんでした。
> デビュー後たったの5年でなくなっていたんですね。
> それも知りませんでした。
>
やはりインパクト強いですよね。いい人にほど早世してしまう、悲しいです。


> 児童相談所も問題が起こるたびに批判されたりしていますが、相談員の方も大変なんですよね。
> いつもそういう批判を聞くたびに胸が痛くなります。

児相はたしかによく批判されていますね。しかし、児相の人たちにもどうしようもない問題多いのですよ。
怪我や命の危険があるとわかっていても、現在の法律ではことが起こってから出ないと思い切った対応ができないようになっていますから。
児相の人たちこそ、そういう法整備を遅らせている政治家や、理解しない一般大衆に文句いいたいでしょうね。

> 短期里親!!
> 初めて聞きました。
> マスコミもくだらない番組ばかり放送してないでそういう情報も発信してほしいものです。

プライバシーの問題とかあるから、マスコミが数字の取れるドキュメントとか作れないし、難しいのかな。

No title

読んでて涙が出るのは僕だけでしょうか?


児童養護施設の件

覚えました。  

そして伝えていきますよ。

自分で里親になれればベストですけどね。


No title

スキャットマン・ジョンさんにそんな過去があったなんて!!知りませんでした。私も今度色々な人に広めていきます~~!!!こんな素敵な事も出来ちゃうって、沢山の人に知ってほしいなぁ☆



虐待はDVの件同様、子どもが「無力」を感じてしまうからこそ、本当に許せない人権侵害だと思います。ましてや人格形成や心の安定や信頼関係の構築を築いていく大切な時期だから尚更。


私はなんだかんだで実際に虐待を受けた子ども達に何の手助けもできてない事、保育士資格を何にも活かせていない事を心苦しく思っていて、今度都内のある乳児院に一度足を運んでみようと思っておりました。
私なんかでも出来そうな事があればお手伝いしていこうと思っております。
私はまだまだ現状の大変さが何も分かってない。「現場」を知って、感じてこそ「分かる」が主義なので、とにかく乳児院さんにお話しを直接伺って、何かお役にたてる事していこうと思っています。


貴重な情報、本当にありがとうございました。

晴トントンさん

> 読んでて涙が出るのは僕だけでしょうか?>
> 児童養護施設の件
> 覚えました。  
> そして伝えていきますよ。
> 自分で里親になれればベストですけどね。

いろんな意味で、ありがとうございます。
僕に「里親」のことを教えてくれた人は、こういっていました。
「あなたが愛情をいっぱいもらった。またこどもにいっぱいかけ終わったと思えたら、
それからでいいから、ほんの1日でもいいから里親をやってみて下さい」と。

えいこさん

> スキャットマン・ジョンさんにそんな過去があったなんて!!知りませんでした。私も今度色々な人に広めていきます~~!!!こんな素敵な事も出来ちゃうって、沢山の人に知ってほしいなぁ☆

僕がおじさんになったせいかもしれないけど、このPV見るたびに本気で泣けます(笑)。

> 虐待はDVの件同様、子どもが「無力」を感じてしまうからこそ、本当に許せない人権侵害だと思います。ましてや人格形成や心の安定や信頼関係の構築を築いていく大切な時期だから尚更。

夫婦間のDVならまだ逃げたり、誰かに保護を求めたりして身を守ることができるけど、こどもにはどこにも逃げ場がないですからね、そのつらさは想像に絶するでしょうね。

> 私はなんだかんだで実際に虐待を受けた子ども達に何の手助けもできてない事、保育士資格を何にも活かせていない事を心苦しく思っていて、今度都内のある乳児院に一度足を運んでみようと思っておりました。
> 私なんかでも出来そうな事があればお手伝いしていこうと思っております。
> 私はまだまだ現状の大変さが何も分かってない。「現場」を知って、感じてこそ「分かる」が主義なので、とにかく乳児院さんにお話しを直接伺って、何かお役にたてる事していこうと思っています。


いまいろんなことが急速にすすんでいるので、現場の乳児院では僕が知っているようなことよりもっとすごいことが起こっているかもしれません。
機会がありましたら、教えてくださいね。


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