2017-08

『准保育士制度』絶対に反対です Vol.1  待遇面の問題 - 2014.04.29 Tue

現在「保育士不足」だからという理由で、「准保育士」というものを設けようという動きがあります。

しかし、これには嘘があるし問題も多くあります。








○待遇面の問題
まず、保育士有資格者が不足しているのではありません。


保育士の資格を持っている人は石を投げれば当たると言われる程にたくさんいます。
有資格者はすでにたくさんいて、毎年の保育士資格を取れる学校からの新卒者も充分いるので、各都道府県で実施する保育士試験は廃止してしまおうという議論が以前あったほどです。

「保育士資格を持っていても保育職に就くなり手が不足している」のが正しいでしょう。


なぜ、資格を持っていてすら保育士にならないのか?
いろいろ理由はあるでしょうけれども、決定的なのはやはり待遇の悪さです。

保育士の平均給与というのは、他の職種平均とくらべて、約10万円ほど低いと厚生労働省の調査で判明しています。
年額ではありません、月額で10万円ほども安いのです。
これは公務員として保育士をしている人たちも含んで平均値をだしているので、民間とくに今後さらに増えるであろう営利目的の保育施設で考えたら、実際はさらに低いかもしれません。


人生設計を考えたら、能力があり他の職にもつける人ほど保育士にはなりえません。

かつて(保母と呼ばれていた時代)保育士というのは女性の憧れの職業などにも常連で入っていました。
なので、多少の待遇の悪さがあっても多くの人材を招き入れることが可能でしたが、現在は一般にも仕事はきつく責任は重く、給与が低い、労働環境もよくないなどと認識されており、賃金の保証すらもなければけっして人材があつまるわけもありません。


僕も以前、企業の認証保育所にスカウトされたことがありますが、提示された給与が現在の大卒初任給にもみたない額でした。
さらに昇給もわずか、賞与も何ヶ月分と数字で出せるほどないとのことです。
10年からのキャリアがあってその額です。
僕は大学卒業者で家族持ちです。大卒初任給よりも低い額を提示されても、どうしたって「はい喜んでー」とは言えないのです。


お金が稼ぎたくて保育士になったわけではありませんが、それではとてもとても人の命を預かる仕事を責任もってすることはできません。
さして責任のないアルバイトをしてすらそのくらいの額を稼ぐのは難しくありません。

准保育士制度では、現状ですら保育士の待遇には問題があるのに、さらに低い給与で使える人材に子供を預かる責任をもたせることを可能にしていこうとしています。


准保育士制度によって何がもたらされるかというと、推し進めたい方はいろいろ取り繕ってはいるけれども、ぶっちゃけたはなし国・行政は保育施設の拡充を安く上げることができるというのと、営利目的の保育施設は准保育士資格を持たせたパート職員などに、子供たちを責任をもって見させられるようになるので、人件費を大幅に圧縮できるということでしょう。
あと、人材派遣会社がこの制度を言い出し・支持しているのをみると、そういったところにも利益がはいるのでしょう。

ここからもわかるように、この准保育士制度というのは保育が営利化されたことと密接な関係があります。


その人材派遣会社の主張では、
「子育てが一段落した30代、40代の人もおり、自分が子育てで経験したことを、社会貢献のひとつとして活かすために時給800〜900円でもやりたいと考える人がいた。しかし、資格が無いために保育の現場には派遣しにくかった。そこで、准保育士などの資格を作り、保育所で補助的な仕事をしながら実務経験を積んだ後、正規の保育士としての受験資格を得るような道筋がつくれないか」

とのことですが、これには事情を知らない人を騙す詭弁が入っています。

保育園は現在でも、数多くの無資格者を「保育補助」として雇っています。
それだけならばなにも「准保育士」の資格などいらないのです。

「准保育士」というのを一種の保育士資格を取るための任用資格にしようというのも、今ひとつ納得のしきれないものです。
もし、今後「准保育士」制度ができたと仮定しても、そこから保育士資格をとるという人の比率は、ていのいい労働力として使われる人の数からいってごくごく少数にしかならないでしょう。


また、短大・大学卒の資格をもっていれば自治体の実施する試験で一発合格を目指すことも可能です。
なので、この資格云々のための「准保育士」と言っているのは、短大・大学卒の資格のない人で保育士資格取得を目指したい人というわりと狭い範囲でのことでしかありません。

とても一般化する理由としては小さいと思われます。
本当に保育士資格を取りたいという人は、現在でも通信制の短大などを利用してとることもできているからです。

実際に保育士資格というのは数ある国家資格のなかでも、もっとも取得しやすい資格のひとつと言えます。



この「准保育士制度」の本当のねらいは、そこにあるのではなくて非正規雇用やパート職員といった人間に低賃金で責任を持たせることで、結果的に経営側の利益を増大させるというのが実際のところでしょう。





保育士資格者が保育職につかない理由をさらにあげれば、保育の質の問題もあります。

安い人件費で人を使おうとしている施設で質の高い保育をしているところはまれです。

職員の待遇の悪いところほど、保育の質も悪いほうへと比例しているところも多いです。
まあこれはどんな職場でもやはり同様のことでしょうか。

高い理念を持ってよい保育を目指しているところは、人がポンポンやめられては困りますからそれなりの待遇や労働条件を整えています。
しかし、そういった保育所は現状では一部です。



賃金を気にせず子供たちのために自分の力を活かしたいと思っている人でも、とんでもない保育をしているところでは働きたいとは思わないのです。

それはもう子供への虐待ではないかなどということをしている保育施設もあります。
そのようなところでは、保育に対する志が高い人ほど働こうなどとは思いません。

そういったところでは概して、職員の質自体がひくいものとなります。
それゆえにそこで働いたとしても労働による満足感なども得にくいものとなってしまいます。

保育の質の低いところでは、総じて質の低い人しか招けず、
質の低い人の職場では、保育の質も低くなっていくという悪循環があります。

これを打破するためには徐々にでも待遇面を改善して、よい人が長く仕事を続けられる環境を整えなければならないでしょう。


保育士の比較的多くは、往々にして心の温かい人たちです。
別にお金目当てばかりでその仕事をしているわけでもありません。

しかしそれでも、賃金や待遇と、働き手の質=保育の質は比例していってしまいます。



そんな保育士や元保育士の声が載っているこんなところがありました。
http://girlschannel.net/topics/57437/
やはり、責任の重さ、労働量に対して給料が低すぎる(生活が維持できないほどのレベルで)。他の職についてしまったら、責任も仕事も軽いのに給料は高くとてもではないが戻れないといった言葉が印象的でした。

そして共通するのは、できれば保育の仕事をやりたいのだけど、給与面・待遇の面でやりたくてもできないということです。
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● COMMENT ●

正社員ばかり辞めていきます

こんばんは。
「准保育士制度」というものについて初めて知りました。おとーちゃんさんのおっしゃる通りだとすると、本当に心配な流れですね。

看護師さんのほうは、准看護師を廃止して全員が看護大学卒になるようにとか、看護師の上級資格を作って、医師でなくても薬の処方や診断もできるスーパーナースを外国みたいに認めようとかいう動きが出てきているというのに、まったく逆のような感じがします。これでは、「保育士」という仕事全体の価値を貶めてしまうのではないでしょうか。

教えていただいたガールズトークのページも全部読みましたが、あの中の口の悪い意見で書かれていたような、「保育士なんて勉強のできない質の悪い人間でも誰でも・・・」みたいなことを、もっと言われてしまいかねませんね。(あれには、心底頭にきました)

国の将来のことを考えたら、人間のスタートのところに一番投資するのがどれだけ大切なことか、わかっていない人が多すぎると思います。保育のことを軽く考えている人全員に、‘一日保育士’を体験してもらいたいです。

0歳から親に代わって子どもの心身の健康な育ちを支える職業なのだから、「准」とかいうわけのわからない制度を設けるより、むしろ保育士上級資格制度を作って、おとーちゃんさんとあおぞらさんとのやりとりに出てきたような、母親指導のできる知識と技術を持っているとか、乳幼児発達心理のレクチャーもできるとか、そういう人になるための講習を園が受けさせることを義務付けて、単なる主任とかいう肩書きではなくて、上級保育士=お給料も割り増しみたいにしたら、保育士全体の資質アップにもつながるし、優秀な人をつなぎ止められるのではないでしょうか?もちろん、その前にベースの賃金アップは必須ですよね。

私の勤めているところでも、優秀な正社員ばかりが毎年のように辞めていっています。ずーっと辞めないでいるのは、中高大学を抱えた非常勤保育士たちです。それはそれで、性根も座っているし、子育て経験もあるわけですが、毎年担任が変わってしまう子どもたちは、やはりどことなく‘捨てられた感’があるような気もして気の毒です。

民間でも、営利が前面に出てはいない良心的な部類の園で、この春には正社員には一時金支給、非常勤には結構な時給上乗せもありましたが、まだまだ男性が安心して一生の仕事にしようと思えるような額には程遠いのが現状なのでとても残念です。

私も、子どもたちのためにも、若くて優秀な現役正社員保育士のためにも「准保育士制度」絶対反対です。

相談があります

おとーちゃんさん、お久しぶりです。
一年ほど前に無認可保育園で働いていて、その保育環境の悪さにアドバイスを求めたしらぼーです。本当にあのときはありがとうございました!今はいったん職場を離れて、現在10ヶ月になる娘を専業で育てている次第です。

保育士の待遇面での悪さは悲しいものがありますよね。命を預かる仕事なのに…子供が本当に好きでもなかなか続けられないですよね。娘が3歳になったらまた保育士として働きたいのですが、どこで働くか模索中です。

記事とは関係ないことなのですが、娘のことで相談があります。
娘は10ヶ月なのですが、とにかくいつもにこにこ機嫌が良くて、よく喃語を話してくれて、平日私と二人で過ごす分には、穏やかで楽しい時間が流れるのですが、問題は休日で…。
平日は後追いの激しい娘なもので、最低限の家事しかしていないので、休日に家事を集中的にやっています。離乳食の下ごしらえなども休日にやってしまって、冷凍などしているので、それに加えて大人のごはん、洗濯、掃除などやっているとどうしてもその間に主人に娘をみてもらうことになります。
ただ、主人は娘を一人で遊ばせて、側でゲームをしているだけなんです。でも、まだ一人遊びが長く続かない娘は、主人のゲームを邪魔したり、他のところにいたずらしに行ったりします。そういうときだけ、ダメでしょ!と制止するので、娘は主人にあまりなついておらず、私に向かって涙を流して寂しさを訴えてきます。主人は娘のことを、お母ちゃん子だから仕方ない、といっています。
娘と一緒に遊ぶのを試みても、積んだ積木をひたすら壊す娘や、おもちゃをはいどーぞ、と渡したりする遊びを延々と繰り返す娘、絵本を読んでもすぐに絵本を取ってかじってしまう娘にたちまち飽きてしまい、1分も相手をしたらもうゲーム、といった状況です。
娘のことはかわいいみたいなのですが、気が短いのかなぁ、と思います。もう少し話せるようになってきたり、もっとやり取りができるようになると変わってくるのかな?と思いますが、こんな主人がうまく娘と遊べるような遊びなど、なにかおすすめはないでしょうか?くすぐり遊びはよくやっていますが、主人の方がすぐに飽きてしまって長続きしないんです…

たまの休みだからゲームもしたいだろうし、と思って何も言わないのですが、せっかくものすごくかわいい時期なのに、遊ぶとすごく喜ぶのに、主人には泣き顔しか見せてないなぁ、もったいないなぁ、と思います。
ちなみに私が遊んでいるのを見ても、これはお母ちゃんだから出来るんだね、喜ぶんだね、としか言いません。

お忙しいところ申し訳ないのですが、お時間のあるときに教えていただけたら幸いです。

No title

こんにちは。

おとーちゃんが「絶対に」という強い言葉を使うのが珍しいなと思いながら、
記事を拝見しました。

確かに、嫌な流れですね・・・
先ほど「准保育士」で検索したら、「撤回を求める声」という
ニュースがトップに出てきたので、少しホッとしましたが・・・

「子育て経験を活かして」というのがお題目として挙がっていましたが、
(幼保一体のこども園の時にも思いましたが)
エライ人は「保育」と「子守」の区別がついてないんだろうなぁと
何とも暗い気持ちになってしまいます。

曲がりなりにも、わたしも2人の子供を育てている最中ですが、
遠い将来「その経験を活かして、保育園で准保育士として
責任をもって働いて」と言われても
こちらでおとーちゃんの記事をたくさん拝見して、
その知識の重要さと責任の重さとを実感していますので、
とても無理です・・・。
(まずは子供の発達や心理等々一から勉強しなおさせてくださいと
お願いするところから・・・)

待遇面以外でもまだまだ問題があるのでしょうね。
続きの記事も楽しみにしています。

保育園に二児を預ける会社員です。

同感です。

何人も保育士さんのやめるところを見てきました。

国の仕事として安心して子供を預ける場所を増やしていってほしいです。

もう少し、保育士さんのお給料が上がれば保育園も増えて、働くお母さんも増えて、国の税収も上がるのになぁと思ってます。

しらぼーさん

まだハイハイとかつかまり立ちのころかな?

この時期はまず大人が相手をすることで子供のリアクションが返ってくるというのが一緒に遊ぶ時の形になるので、大人が満足するような反応を子供の方に出させるという考え方そのものが難しいものです。


いないないばあをしたって、くすぐったって、なにをしても可愛らしいものですが大人にその気がないのでは、子供からいい反応も返ってこないでしょう。

「抱っこして家の周り散歩してきてあげて」など指定して、二人の時間を持たせてしまったりしたほうがいいかもしれません。



男性は父親になるという自覚が、母親にくらべて薄かったり、時間がかかたりするとよく言われます。

だからといって、そのままにしておくと大きくなってもまるで「母親が勝手にどこかから子供を持ってきた」かのような父親の意識の状態になってしまうということもときどきあります。


子供に関心がなく、子供も懐かず、子育てを母親任せという状態は家族として、とくに母親からして大変つらいものです。

大人相手のことですからどのようなアプローチがよいかは、人それぞれですがもう少し意識を持って向き合ってもらえるように話し合ってみるのがよいのではないかと思いますよ。

けいこさん

男女雇用機会均等、男女共同参画と女性も社会にでて働くけるようにし、さらには扶養控除を減らすなどして働かないと厳しい社会にした割には、政府は働きやすさというところをこれまであまりに軽視してきたと感じます。

現在急いで作られている保育施設も、少なくない部分が質の低い託児レベルのものです。

本当にもう少し国民の立場にたって考えて欲しいものです。

ありがとうございます!

アドバイスありがとうございました!
そうですね、大人相手のことなのでよく話し合ってみます(>_<)
あまり重要なことと思っていないようで、話してものらりくらりとかわされるのですが、真剣に話してみようと思います。
いつも記事を参考に読ませていただいております。ありがとうございました!


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