2017-10

父親の育児参加 Vol.3 ―江戸時代の子育て― - 2012.10.02 Tue

「イクメン」が流行りだした頃から、子育てにおいて注目されてきたことがもうひとつあります。

それは「江戸時代の子育て」です。


現代の日本では、子育ては女性がするものという観念が強いですが、というより揺るぎない当たり前のこととなってしまっていますが、江戸時代の子育てを知るとそれがちっとも当たり前でなかったことがわかります。

むしろ、子育てというのが男性の役割であったとすら言えるようです。




柏崎日記』『桑名日記』という有名な同時代資料もあります。


簡単に説明すると、祖父に妻子を預けて単身赴任する息子との交換日記です。
祖父が孫をかいがいしく養育する姿が具体的に描かれています。



江戸時代以前においては、家を男子の子供に継がせていくということが、その家庭の最重要課題でしたので、子育てそのものが父親の主要な役割であったようです。

逆に、江戸中期以降、女性の教育に使われてきた書物『女大学』の中には、「婦人のありかた」というものが描かれていますが、そのなかにはなんと「子育て」は存在していないのです。



それは、武士階級だけでなく庶民でも同様の一般的な社会通念であったようです。

『初天神』など落語の演目の中にも、父と子のやり取りが描かれたものなどがありますが、それらは「たまたま」父と子で過ごしている場面であったというよりも、それそのものが日常でした。



また、江戸期の特色として複数の社会的『親』の存在があります。
『名付け親』『取り上げ親』『帯親』『拾い親』『烏帽子親』『ワラジ親』『鉄漿親』『職親』『仲人親』など、実の父母以外にもその子供の養育に責任をもった、『親』(擬似親子関係)が多数存在します。
(このあたりは柳田国男の「親方子方」の研究が有名です)

また、子供の成長(自立)のために、たがいの子供を交換して養育する風習などが行われていました。
さらには他家に行儀見習いとして預けたりと、広く社会の中で子育てをしていたことなどもわかります。



もちろん、今の時代にそれらが出来るというものでもありませんが、この時代の男性による子育てや広く社会で行われていた子育てというものを知ることは、現代の子育てがいかに硬直して窮屈な状態にあるものかを再認識させるきっかけになることではないかと思います。

また、同時にそういった認識が、「子育ては女性の仕事だ。男性は外で仕事さえしていればよいのだ」というような硬直した考え方に一石を投じることができるかもしれません。



では、そういった子育てにおける男女の逆転現象はどこで起こったのでしょうか?

これも実ははっきりしています。

それは明治以降の日本の『近代化』のなかで行われてきました。

そのあたりは次回に続きます。


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● COMMENT ●

サザエさんも

興味深い記事ありがとうございました。
あげられた文献も読んでみたいと思います。

以前、ある方の子育て講演会に参加したことがあるのですが、まさに江戸時代などは子育ては男親が活躍しており、よく子供とかかわっていたそうです。

また、昭和代表のサザエさんも決して一人では子育てしていないと言っていました。
タラちゃんは祖父祖母(波平さんフネさん)、叔父叔母(カツオ、ワカメ)との関わり、さらにはお隣さんや裏のおじいちゃんのところでご飯を食べたりしており、サザエさんは一人で育児に向き合っていないのが普通でしたと言っていました。

今の時代のような細かい悩みはなかっただろうなあと羨ましく思いますね。

広く歴史を見てみると、子育て観・子供観というのは時代によって全く変わってくるのですね。
鎌倉時代くらいまでは通い婚が主流であったため、子供は産まれた家庭つまり母親の実家で育てられることが多かったと聞きます。(その中で、どのような子育てが行われたかは知らないですが(^_^;))この頃は財産の分与に女性も権利があり、女性が家を継ぐこともあったそうです。
こうして見ると、子育ての在り方は社会の在り方を色濃く反映しているのが分かり、とても面白いです。
以前、歴史の中の子供について少し興味を持っていたので、今回のお話はかなり興味深かったです。次回も楽しみにしております。
返信不要です。

タンタンさん

サザエさんも確かにそうですよね。
昔は、「父親が厳しい存在」というイメージですが、実際は他のところで子供にもガス抜きの場がたくさんあったのですね。

いまでも昔ながらの価値観で語る人がいるけれども、現状のガス抜きどころか居場所もなくなってしまう子供たちの状況に理解が及んでいないと言えると思います。

ちなみに、サザエさんも原作だとお父さんもああいう「厳しい父親」像では描かれてなくて、むしろ家族全員がいまのカツオ君状態なんですよね。

ただいま育児真っ最中の者ですが、江戸時代の社会全体が子供を大事に育てていたらしいとの事。
とても羨ましく感じます。
どの身分、社会的地位でもそんな感じの育児をしていたんでしょうか?
とても興味深いです。

匿名希望さん

江戸時代の、育児書がもっぱら口を酸っぱくして言っているのは、「甘やかさないこと」だったのです。
しかし、今の時代で使われている文脈としての「甘やかさない」とは違うものでした。

なぜなら、家族や大人があまりに子供を大事にしすぎたり、可愛がりすぎてしまうので、過保護・スポイルになりすぎてしまうという特徴があって、それゆえに「甘やかさないように気をつけましょう」と育児の本は述べていたとのことです。

そういった甘やかしすぎないように、子供を交換して預かり養育する「子がえ」という育児方法まであったとか。


江戸時代には武家においては、後継の子供がいなければお家断絶、それでなくても乳児死亡率が10人に1人以上の割合でいたこともあって、子供が健康でいてくれるのはそれは喜ばしいことであったようです。


また、親は老年になったら子供に養われるというのが、一般的な当時の家族形態でしたから、自分の子育ての失敗は自分に返ってくることでもあり、子供を大切に育てていたようです。


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