2017-05

「ねちっこい甘え」について  ― 受容の大切さ ― - 2012.09.29 Sat

『最近の親の意識・あり方の変化 Vol.2』 の事例の中で出てきたこの「ねちっこい甘え」についてですがコメントでどういうものなのですかと質問があったので、ここではそれについて書いていこうと思います。

ですが、その前に実を言いますと、このくだりはあえて具体的に書いていません。





なぜなら、似たような行動というものは、こういった深刻な程度でなくとも普通に出てくることがあります。
そういった似たような行動が我が子に出ている(もしくは我が子にでているととった)場合、その人が過剰に気にしたり、気にやんでしまうことが心配されたからです。

そうやって、自分の子育てや関わり、ひいては自分を否定してしまうことは、子育てにとっても子供にとっても親にとってもけしてプラスになりません。


ですが、現代の子育てのように、孤立した子育てを行っているような状況では、この気にやんでしまうということが大変多いです。

なので、この事例の行動に限りませんが、似ている行動があるからといって、それでどうか自分の子育てや自分を否定しないで欲しいと思うのです。

よしんば、それらが根拠のないものでなかったとしても、否定したり自分を責めたりすることでは何も解決しません。

それどころか、親がネガティブな気持ちになることは、子供にもそれが伝わりより難しい方へと行きがちです。
そして、もうひとつ気をつけたいのが、親が自分を責めるということそのものが、親にとっての逃げ道、現実逃避にもなりかねないということです。

親が日々の行動を変えたり、気難しくなって対応の大変な子供に接したり、思い通りにならない子供に面と向かってなにかをするよりも、自分を責めて気にやんでいる方がはるかに楽な場合だってあるからです。

子育てがわからない、手伝ってくれる人もいないという状況にある、今の親御さんたちをせめているわけではありません。
そういった状況や気持ちもよく理解できますが、気にやむことに留まってしまうと、なにも改善しないままずるずると年齢だけを重ねて、そうなったときには本当に対処がしきれない状況になってしまうという例もたくさんあります。

「大人が変われば子供は変わる」 これは本当です。自分では今の状況をどうにかできないと感じることもあるかもしれませんが、子供の行動にはひとつひとつ理由のあるものですから、ちょっとずつだとしても対応していけばその状況を改善することは必ずできるものです。

ですからどうか書いてあることを読んで自分を責める方には取らないでください。
似たような行動がお子さんにでていたとしても、多くの場合僕が事例で上げているようなものよりも深刻度ははるかに低いはずです。


では、前回の事例の子供の甘え方について具体的に見ていきましょう。

>担当の保育士と信頼関係を作って、その保育士がきちんと受け止めるようにしていくとだんだん甘えを出せるようになってはきたが、気持ちに余裕がないのでその出し方が「子供の可愛らしい甘え」という程度ものではない。
>なんともねちっこいのだ。担当保育士は多大なストレスに耐えながらもなんとか受け止め続けていく。

該当記事では具体的に書くつもりがなかったので、「ねちっこい」と雑駁に表現してしまっているが、慢性的に受容が不足して甘えに飢えた状態にいる子だと、しばしば相手が不快に感じるようなことまでして自分の甘えを受け止めてもらうことを確認しようとする行動をしめすようになる。

この事例の担当保育士は女性なのだが、この子が胸を触ってくる。それだけならよくあることだが、わざと痛くするように乳首をに爪を立てたりして、痛がる反応を見てニヤッっとしたりする。
ほかにも、嫌だということを示しても執拗に耳をいじってきたりと、素直な甘えの段階ではなくなっている。
(繰り返しになりますが、こういった行動は深刻な受容不足でなくとも同じようにでることはあります過剰に気にしないようにしましょう。また、うちの子にも同じようにでているがどうなんでしょう?と相談されても実際の様子が見えない僕からはその程度がどのくらいだとかは判別のしようがありませんので、あしからず)

また、他児に自分から手を出して、それにリアクションを取られることで自分が被害者の立場になって甘えを求めたりする。
ほかにもあえて排泄を失敗することで、世話をしてもらうことに満足を見出したり、それをきっかけにして甘えたりなどなどの行動を示す。


単に抱きしめてもらうことでは満足できないようなこういった甘えの仕方は、慢性的な受容不足でしばしばでる。

こういうのには、「嫌がることをしてでも、それでもさらに受け止めてもらいたい」という気持ちからきていると思われる。
どれだけのことをしても自分を受け止めてもらえるかという一種の試す行動という部分もあるだろう。

虐待されている子などでは、自分を受け止めてくれる人にあえてつばを吐きかけたり、暴言をはいて納得のいくまで試してから、ようやく少しずつ甘える行動を示すといったこともある。

このように甘え方にも様々な形があるのだが、子供は意識してとか悪意があってしているわけではない。
そういう出し方をせざるを得ない状況に大人によって置かれてしまっているからこうなっているのであって、子供に責められるところはない。

しかし、そうはわかっていたとしても、素直に出せなくなってしまっているこのような「ねちっこい甘え」を大人がひとつひとつ大きな包容力でもって受け止めていくのは、多大なストレスを感じることではある。

だが、それでも子供の安定や健全な成長につながってくれるならばよいのだが、本当に子供が望んでいることは親に受け止めてもらうことなので、(親がいなかったりそれが到底できない状況にあるというならば話は別なのだが、)保育士や祖父母が親の代わりに受け止めたりしてもなかなか、子供が本心から満足できるところまでは到達しえない。

日本では子育ての先入観として「甘やかしてはならない」というものが大変強いのだが、子供の「甘え」を受容することと、「甘やかす」ということは根本的に違うことである。

子供が大人に素直な甘えを出せるようにすることは、乳児期における子育ての最重要課題だと僕は思う。

「甘えを出せるようにする」と書いたが、「素直な甘え」というのは放っておいても子供から出せるものではない。
大人の方に「甘えを受け止める姿勢」つまり「受容的態度」がなければ、子供はその甘えたい気持ちを素直に出すことはできない。

その結果、だんだん屈折した甘えになっていく。

親がなかなか「受容」を示さないと、子供はそれまでの経験から少しでも受け止めてくれる状況をつくったりする。

例えば、ケガをしたときや病気の時には親が受容してくれた経験を持つ子は、転んだ時に必要以上に泣き騒いで親の受容を引き出そうとしたりなどである。

また、よく見られるのは食事時のわがままによって甘えたい気持ちをみたそうとする行為である。
親は子供に食事をしっかり食べて欲しいと思うので、子供はそれを見透かして、食事の時にごねたり、わがままを言ったり、親をいいなりにさせるようなことをして、それを受けてもらうことで「甘えの受容」の代償行為にする。

一種「食べることを人質にとって親をいいなりに」しているようなものである。

「ごはん食べさせて」くらいならば可愛い甘えだが、「こんなのは食べたくなかった、うどんがいい」などと親に作り直しをさせたり、親がそれを許容していたりすると、その子は素直な甘えではなく「わがまま」を甘えの代償行為にしてしまう。


こういう経験をしてしまうと、それを学習してしまう。
つまり、親が素直な甘えを受けないで、それがねじれてネガティブな出し方になったものを受けていると、それがその子の「甘え」になってしまう。

しかし、「代償行為」では本当の意味で満足を見出すことはなかなかできない。
そしてより大人が気持ちよく受け止められない方に、エスカレートしていってしまう。

こうなると、子育ては大変である。
しかもずっと続く。


まず「甘えの受容的態度」、そして「素直な甘えの出せる子供にすること」これを乳児期に経験的に積み重ねることはそれゆえにとても大切なことである。
もし、乳児期に獲得できなかったとしても、あとからでもそれは大人の関わりしだいで修復も可能である。

「甘えの受容」が「あまやかし」や「わがまま」と違うのは、そこに大人からもらう安心感や自己肯定など、人間の成長にとって必須のものがたくさん含まれているからである。
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● COMMENT ●

自分の子育てを否定しない、簡単そうだけど今の世の中じゃどんどん難しくなっていることですよね。

息子の一歳半健診の時、市の保健師が息子に遊んでいた玩具を「ちょうだい」言ったのですが息子は渡さなかったんです。
すると保健師は「この子はおかしい。」
私が「機嫌などによっては渡さない時もあるけど、ちゃんと渡せる時もある」というと
「機嫌などによって渡せない時があるのはおかしい。この子に協調性がないからだ。お母さんが遊んであげていないからですよ。」と一方的に責められました。
その時は本当に愕然として、自分の子育てを否定するどころか今まで普通に可愛いかったはずの息子が可愛く思えなくなりそうな状態でした。
慣れない土地に引っ越してきたばかりで本当に孤独な中でしたが、うちは幸い主人が協力的なのですぐに気持ちを立て直せたのですが…あの時誰も相談出来る人がいなかったらと思うと恐ろしいです。
(因みにあれから一年以上たち、自分から物の貸し借りも出来るようになってきましたし、とってもよく喋るしよく笑う可愛い子に育ってくれています)

そうそう、先日積み木について相談させて頂いたのですが覚えてらっしゃいますか?
試しに小さな大工さんに積み木のサンプルを頼んだら息子は大喜びで毎日「もっと積み木!」と言っています。
「クリスマスにサンタさんが持ってきてくれるらしいよ」と言うと息子はパンダさんが特急電車に乗って積み木を届けてくれると思って楽しみに待っているみたいです。(笑)

NO TITLE

子育てって、ほんとにいろんなところに一喜一憂してしまいます
子供がやたらイライラキーキーかんしゃくを起こしたら、何か突発的な原因があって(例えば、その日はお昼寝が足りなかったとか)イライラしてるだけだとしても、つい自分の子育てを疑って子供の育ちに悪い影響を与えて来てしまったのだろうか~とビクビクしたり。
もしおとーちゃんさんのblogに出会えていなかったら、息子の悪い面ばかりが気になって、子育てって何でこんなに大変なのっ?!と憂鬱な日々を送っていたのではないかと思います(^_^;)
本当に、おとーちゃんさんには感謝しております。
子育てについて、気になる問題やこれでいいのだろうかという悩みは日々ありますが、悪いと思われる面でさえ、時にはプラスの方向から考えてみることも大事なんだなと知りました。
息子の育つ力を信じつつ、自分の子育てを楽しんでいこうと思います。

かとりいぬさん

保健師は主観的に、子供や親を否定したり、子育てを不安にするようなことを平気で言う人がけっこういます。
そういう話を聞いたことが10や20ではありません。
もちろん全部が全部悪い人ではないのだろうけど、あまりに多すぎます。
公務員だから変な人ものさばっちゃうのだよね。残念なことに。

小さな大工さんはサンプルくれるのでいいですよね。
発展もしやすいので長く使えていいものですよ。


こんにちは!
いつも相談にのって頂き感謝します。
朝食のヨーグルトをやめてから、主食をきちんと食べてくれるようになりました。
けれど、メニューによって食べない!と言ったりなので、今まで甘やかしてきてしまったんだなぁと思ってます。
出されたものを食べて欲しいと伝えてますが、もっと関わりを増やしていきたいです。
ママは結構遊んだと思っても子供はまだまだ遊び足りなかったりするみたいです。
息子は甘えん坊なんですが、抱っこの要求が増えたので、なるべく応えていたら、少し落ち着き、自分からオムツをやめると言い出したのでビックリしました!

おとーちゃんのブログで知ったミッキィ社の汽車セットを誕生日にプレゼントしたらとても食い付きが良く、ずっと遊んでます♪

No title

受け止める心は大事だと思います。

No title

こんにちは。初めてコメントをします。
8カ月の娘のことで相談させてください。赤ちゃんにも友達は必要でしょうか?
月に3回シュタイナーの集まりがある以外、平日は毎日二人っきりです。転勤族のため知り合いがおらず、他の赤ちゃんや大人と接する機会がありません。
児童館や支援センターは、にぎやかすぎて私が居心地が悪いのであまり連れて行っていません。
連れて行ったら、娘はじーっと他の人を観察します。スーパーでも他の赤ちゃんを見るとじーっと振り返ってでも見ています。なので、もっと触れ合いを持たせてあげたほうがいいのかな?と思ったり。

あまりにも二人っきりなので心配です。私は毎日二人っきりでも楽しいので構わないのですが。
もっと出て行って人と触れ合いをもったほうがいいのでしょうか?


よろしくお願いします。


とかちさん

>悪いと思われる面でさえ、時にはプラスの方向から考えてみることも大事なんだなと知りました

人を育てるということにおいては、このことは本当に大事なことなのだけど、今までの日本の子育てではこの視点はなかなかもてないのですよね。

子供にとっては、いい悪いを仕込まれる前に、その存在そのものを認めてもらうこと、つまり全面肯定こそが前に進む力になるのだけどね。

ゆいぽんさん

あくまで僕の考えですが、

全く必要ないと思います。

過去記事でも書いていますが、こういった「小さいうちから他者と関わらせなければならない」というのは、まさにいまテーマにしている強迫観念めいた日本の子育て観にほかならないと思います。

関わったから良くないということではないですが、(ただし場合によっては良くないこともあります。情緒の安定や安心感などを阻害されるようなケースです)
そうしなければならない必然性はまったくないでしょう。

二人でも楽しく過ごせているというのならば、まったく問題ないと思います。

No title

ありがとうございます。
肩の荷がおりてホッとしました。
これからも娘とふたりっきり楽しもうと思います!!

ネガティブな甘えが多いクラス

〉親が素直な甘えを受けないで、それがねじれてネガティブな出し方になったものを受けていると、それがその子の「甘え」になってしまう。
しかし、「代償行為」では本当の意味で満足を見出すことはなかなかできない。
そしてより大人が気持ちよく受け止められない方に、エスカレートしていってしまう。
こうなると、子育ては大変である。
しかもずっと続く。

特定の保育士に代償行為の甘えネガティブな甘えを出す子がいます。その保育士の周りにはそういう態度をとる子がたくさんいます。その保育士がいない時はネガティブな甘えを出すことなく普通に過ごすことができます。

これが保育を大変にしていますがネガティブな甘えを出す子を素直な甘えを出せるようにするにはどうしたらいいですか?

きららさん

ネガティブな甘えでもまだ出してくれているということです。
それならばまだ対応の余地はあります。

本当に対応が難しいのはそれすらもあきらめてしまったときだからです。



ネガティブな甘えを素直な甘えにするというのは理屈だけ言えば簡単です。

まず、大人の方が甘えを受け止めるだけの余裕を持つこと、
そしてそれを態度で示せること。

その上で、「先回りした関わり」でネガティブを出す前にこちらから受容してしまうか、
ネガティブな出し方をしてきたときは、優しく素直な甘えへと誘導してあげ、そちらで十分に子供を受け止めてあげること。

この4つに留意すればいいでしょう。

年齢が上がるほどその対応の難易度もあがりますが、3歳以下くらいでしたらそう難しくないでしょう。


あとはそれを忙しい保育の中でどうやって実践していけるか、そこここの保育状況の中でどこまで配慮していけるかどうかという点になるでしょうね。

「忙しいからそれは大変だ」と後回しにしてしまうこともできますが、忙しいからこそそれをしっかりすれば結果的には子供が安定するので、のちのちそれに取られる無駄な忙しさを減らすことができるので、結局は早めにそれに取り組んでしまったほうがお得です。


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