2017-11

子供の人権 Vol.1 - 2011.08.31 Wed

いつか保育の質についてのお話をしたいと思っていました。
しかし保育の質について考えるためには、その前にどうしても整理しておかなければならないことがあります。
それは『子供への視点』です、『子供観』といってもいいと思います。

「子供をどのようなものとして考える・捉えるのか」ということが明確でなければ、そもそも「保育の質」など推し量ることもできないからです。


僕は現代においてこの「子供への視点」のよって立つべきところは『子供の人権』という概念にあると考えています。



『子供の人権』とはあまり耳慣れない言葉だと思います。

法律上のいわゆる「人権」とはまたちょっと別なものです。
法律上の「人権」ならば大人も子供も基本的に同じものです。ことさら「子供の」とつける必要はありません。

知っている人は国連の定めた『世界子供の権利条約』というのを聞いたことがあるかもしれません。
あれが比較的近いのですが、国際的な子供の問題と日本の子育てのなかでのこととではだいぶ変わってきてしまいますので理念的には共通する部分もあるのですが、実際上のところではかなりニュアンスが違ってきてしまいます。

ですが『世界子供の権利条約』の意義を知ることも無駄ではないので、今回は『世界子供の権利条約』についてざっと見ていきたいと思います。

ただし、かなーり噛み砕いたところを書いていきますから、学生さんとか専門的に『世界子供の権利条約』を調べたい方はきちんと原典にあたってくださいね。


あくまで僕の理解ですが、『世界子供の権利条約』には一義的な「子供の人権」と二義的な「子供の人権」とに分けられると思います。

一義的には「子供を子供あつかいする」ということと、二義的には「子供を子供扱いしない」ということです。


国連がまず第一に「子供の人権」を定めなければならなかったのは、この一義的な「子供の人権」必要性からです。

平和な日本からは考えるべくもありませんが、世界的にみれば子供が子供として守られていないことがたくさんあります。

「生存する権利」、「保護される権利」、「教育を受ける権利」
など先進国に暮らす人や我々日本人にとっては、言うまでもないあたりまえのことであるこれらの子供のもつ権利ですが、それは必ずしも世界中で当然のことではありません。


国連は長いこと飢餓に苦しむアフリカに食料などの支援をしてきました。
そのなかで相当量の食料があっても子供の死亡率がとても高く、当初は不思議におもわれていました。

そこでは力のあるものがまず食べ物などを確保するという文化があるので、子供にまで物資がいきわたっていなかったのでした。

子供は守られ、まず一番に食べさせようと日本人なら考えると思いますが、それがかの地では当然のことではないのでした。子供の生存する権利がかならずしも保障されていないのです。


また、子供は親の所有物、支配下にあるものという考え方も世界中で根強くあり、アフリカの女子割礼、一族の名誉のために親が子を殺すインドの名誉殺人などなど、親によって身体や命を損なうことも許容されていたり、文化的に必要と考えられていたりと、子供はひとりの人間として扱われていないという事実があります。

また、子供は安価な労働力や兵士として扱われることもあります。
アフリカやアフガニスタンなどをはじめとした紛争地域では子供が兵士にしたてられることは珍しくありません。
安価で忠実、洗脳しやすい兵士として大人のいいようにつかわれてしまいます。

子供の人身売買や男女問わず売春の対象とされるのもまだまだ今日的な問題です。


教育をうけられるのも必ずしも当然のことではありません。
日本のCMでもユニセフが学校給食への支援を要請していますが、実は給食が教育を支えているからなのです。
発展途上国では子供は労働力なので、無償で学校があったとしても通わせてもらえるとは限りません。
そこで給食で十分な食事を一食もらえる、食費が浮くからと親もしぶしぶ通わせているという側面があります。
教育レベルの低下は治安の悪化や、国の貧困を招いてしまうので子供がたとえ基礎的なものだけだとしても、教育をうけられるというのはとても重要なことになります。

日本では字が読めない人というのは非常にまれですが、世界的に見ると先進国であっても識字率がここまで高いというのは多くないようです。

このように、必ずしも子供は「子供」として大切にされ保護されているわけではないのです。
だからこそ「子供あつかいしてもらう」という「子供の権利」を世界的には主張しなければなりません。これが国連がまず第一に求めたかった一義的な意味での「子供の人権」です。

また次回につづきます。
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● COMMENT ●

ご相談

保育士おとーちゃん様

はじめまして。私はムチコと申します。

保育士おとーちゃんさんのブログを拝見させていただき、子育ての勉強をさせていただいています。
子育てについての色々な情報があり過ぎて、何が本当かわからなくなっていた頃、保育士おとーちゃんさんのブログに出会い救われました。

いま、すごく悩んでいることがあり、どうしても自分で答えというか、決断ができなく、保育士おとーちゃんさんのご意見をお聞きしたく、投稿させていただきました。大変お忙しいのに私なんかの悩みを図々しいところですが、どうかよろしくお願いいたします。


私は1歳9カ月になる息子がひとりおります。
息子が3か月の時、10カ月の時、1歳5カ月の時に夫の転勤で引っ越しをし、今は誰一人知り合いのいない土地で生活しています。
夫が今年の5月に海外事業部に配属され、月の半分以上は海外出張ですが、なんとか自分なりに頑張ってきました。
しかし、夫が9月下旬から中国への赴任が決まり、半年以内に私と子供も来て欲しいとのことです。夫が赴任する土地は日本人がほとんどいなく生活も子育ても難しいから、3時間離れた土地に私と子供は住み、週末だけ夫が帰ってくるという生活が5年になるそうです。

私は、中国語も英語も話せないですし、海外旅行もいつも熱を出してしまうほど、日本国外が苦手です。そんな母親と中国で生活し、週末には父親に会えるのと、父親は年に2回位しか会えないけど両親や知り合いのいる土地で生活するのは息子にとってどちらがよいのでしょうか。
私は子供にとって愛情と環境がとても大切だと思い、今まで頑張ってきました。引っ越しをして息子は4度も環境が変わりましたが、ストレスのないよう心がけてきました。でも今回はどうしても私の中でスッキリ決断できないのです。
父親との関わりもとても大切だと思います。やはり祖父母にとっては孫なので父親の代わりにはなれないところもあります。息子は家族3人で過ごすのがとっても大好きです。
父親の近くか、安心できる環境か。

こどもは両親が揃っている環境と、安心できる(治安、言葉、たべもの、環境汚染の不安)環境どちらが大切なのでしょうか。

絶対日本にいたほうが良いと言われたり、子供はすぐ環境に適応できるし、中国語も英語も話せるようになるんだから中国に一緒に行ったほうが良いという人も。。。

私自身、夫も大切な家族。夫は不治の持病もあるので(今は元気です)近くで支えてあげたいし、子供と接する時間もなるべく作ってあげたい。
環境の変化がそれほど子供に影響がないのなら、中国へ行きたいと思っています。

こどもの環境の変化、父親と関わる時間についてをお忙しい中、申し訳ございませんが、ご意見どうかよろしくお願いします。

ブログで相談したりするのは初めてなので、失礼なところがありましたらすみません。


すごくわかりやすかったです!

ムチコさん

コメントを繰り返し読みました。

僕自身海外での子育ての経験なんてないし、わかるのは子供との関わり方くらいなのであまり参考にならないかもしれませんが。

たしかに、海外での子育てというのはいろいろ不便なこともあるでしょうし、子育てする上でも頼れる人がすくなかったり、母子ともに息が抜けないような状況というのも起きやすいだろうし、大変なことだろうと推察されます。

ですが、コメントを何度も読んでいますとムチコさんご自身としての方向性は決まっているように感じました。
ご主人も一緒に来てくれることを望んでいるし、ムチコさんとしてもご主人と一緒にいることを考えていらっしゃいます。

そこにムチコさん自身の海外で暮らすことの不安と、そこで子育てしなければならないという不安、子供に対する影響というところで今ひとつ踏ん切りがつかないと思っていらっしゃるようです。


たくさんの不安要素を漠然と抱えていると、どうしてもそれが合わさって大きな不安となってしまいます。

こういうときはひとつひとつの具体的な問題にばらして考え、解決していくとじつはその不安はそれほど大きいものでなかったとわかることがあります。


具体的になにを心配しているのかひとつひとつ紙に書き出して、それに対して情報をあつめたり、答えを見つけていくことで大きな不安が比較的小さくなっていけるかもしれません。

またお子さんが小さいことが利点に働くかもしれません。
学齢期であったりして、現地で学校に入らなければならないとすると、おいそれと日本に来たり長期間はなれることは難しくなってしまうかもしれませんが、ムチコさん自身がむこうで働くわけでもお子さんが学校に通うわけでもないので、1年間のうちにずっと現地にいなければならない必要もないからです。

5年間ずっといなければならないとしなくても、柔軟にかんがえればムチコさんとお子さんは1~2ヶ月とか日本にまとまって帰って来てもいいわけです。ずっといなければならないというプレッシャーも少しは和らぐのではないでしょうか。
また、お子さんが学校に入る年齢には日本に帰ってくるという選択肢もあります。

そうすると、海外赴任のけっこう大きな問題である子供の教育もあるていどの見通しがもてます。

あくまで参考意見にすぎませんが、そんな風に考えると多少とも問題解決につながるかもしれません。
悩みばかり大きくしないで、具体的に不安点をあげて前向きにご家族と話し合って考えていかれるのがよいのではないでしょうか。

子供に関してははるかに大人よりも柔軟性は高いのでなんとでもなるような気がします。

お返事ありがとうございます

お忙しい中、お返事ありがとうございました。

文章が下手で、わかりにくい相談になってしまいすみませんでした。

保育士おとーちゃんさんのおっしゃるとおり、海外中国という私の漠然とした不安が、より自分を大きな不安に追い込んでいたのだと思います。
不安要素を箇条書きして、少しでも解決できるよう主人と話し合いたいと思います。


「子供に関してははるかに大人よりも柔軟性は高いのでなんとでもなるような気がします。」という言葉がすごく救われました。初めての子供なので、本当にそうなのかという疑問がずーと引っかかり、踏ん切りをつけることができませんでしたが、この言葉を聞いて、息子への心配は減りました。
あとは、私が今と変わらない生活、精神状態を保てるよう努力することで中国で生活できると思います!!
その為には、今の不安をひとつひとつ解決することですね。

ご相談にのっていただき本当にありがとうございました。
これからもたくさん勉強させていただきたいと思います。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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