2017-06

幼保一元化とこども園制度  Vol.1 - 2011.01.14 Fri

前回、「新年なのでこんなことは大事にしていきたいな」を予定してると言ったけど、書いててなんか説教くさくなってきたのでやめときます~。ごめんなさい。

そんなこんなで今回は子供をめるぐもので、今年一番大きな問題になるであろう制度上の問題について書いていきたいと思います。

本当は僕はこういう制度とか政治向きの話とかは、好きでも得意でもないのだけど、あまりにお粗末でひどい話なので思うところを一度述べておこうと思います。

それはなにかというと、「子ども・子育て新システム」いわゆる「こども園」(認定こども園)制度についてです。


「子ども・子育て新システム」とか「こども園」とかって知らない方も多いかもしれませんが、平たく言ってしまえば「幼保一元化」のことです。(民主党がいうには幼保一本化)

これまでにもあった「幼稚園と保育園を一緒にしてしまえ」というあれです。
いままでいろいろな問題からあまり現実的になっていなかった「幼保一元化」ですが、それをさらに今年度中に具体的に推し進める法案を通そうといまの政府はしているようです。


実は「幼保一元化」についてずいぶん以前から書こうと思っていたのですが、具体的な子供への関わり方なんかを優先してこれまで書いてきたので延び延びになっていました。
そこへきてここ最近急速にこの「こども園」の問題が具体化してきたのでこれは書かずばなるまいと思った次第です。(「こども園」制度自体は2006年からあることはありました)


「幼保一元化」ってこれまで幼稚園と保育園では管轄している役所が違うから、うまくいかないんだとかいうお話を聞いたことがあるんではないでしょうか。

あくまで僕の推測ですが、あれは別に文部科学省と厚生労働省の管轄が違うから・仲が悪いからうまくいかない(そういう面もなきにしもあらずなのかもしれませんが)のではなく、一緒にしてうまくいくわけがないとお役人たちはわかっているからこそ推進してこなかったのではないかと思います。


僕は保育士になって強く実感したことがあるのですが、それは世間一般の人たちは「幼稚園と保育園の違いをほとんどわかっていない」ということです。
とくに男性、年配の人であればなおさらその違いをわかっていない、考えたこともない人が多いようです。

以前読んだマスコミの記事のなかでも「幼稚園と保育園でわかれて子供をみているのは二重行政の無駄づかいの代表的なものだ」なんて書かれているものがありましたが、これを書いた記者の人はおそらく幼稚園と保育園の違いなんて実際のところは知らないのではないかと思います。

政治家の人たちも幼稚園と保育園の違いをわかって言っているのかな?という素朴な疑問が僕にはあります。


「子ども・子育て新システム」・「こども園」制度のお話をするまえに、幼保一元化について僕が前々から考えていたことをまず書いていきます。


幼稚園は未就学児の「教育」を目的として設置されています。
保育園は「保育に欠ける児童」の保育を目的としてあります。

僕は幼稚園については詳しくないですが、個々の差こそあれ日本の幼稚園は学校でいうところの「学力的なお勉強」よりもむしろ集団での生活や学習態度の形成を旨とした、総合学習的な意味での教育を重視してこれまで存立してきたと理解しています。

一方で保育園は一般的には仕事にいく親の代わりにその間子供を養育する場としてありました。


わかりやすい違いとしては時間の長さがあります。
幼保一元化について書かれたものの多くには、幼稚園では4時間を目安として子供を預かり、保育園では8時間を目安として子供を預かると書いてありますが、実際にはいまは保育園は11時間開所が基本とされてしまっているので、幼稚園の4時間に対して保育園では11時間あずかれると考えた方がいいかと思います。

もちろん個々の園による差はありますので基本の時間としてです。幼稚園でも年齢によってはもっと短く定めているところや長く預かっているところ、保育園では利用者の状況に合わせてなので開所時間に関わらずもっと短い保育時間の人もいれば、夜間保育までやっているところまで様々です。
ですが基本の預かる時間として考えるとすると4時間に対して11時間であると言えるでしょう。


しかし問題は時間の長短だけではないのです。
役割の違いが明確なものであるからです。

あるいは、これが40年くらい前ならば幼保一元化にそれほど問題はなかったかもしれません。
しかし、「核家族」が社会問題化した頃からこの方、子育てに対する問題というのは年々増加の方向にあると言えると思うのです。


例えば、保育園ではこんな状況の子も預かります。

保育園=「仕事にいっている人の預けるところ」ではないのです。
「保育に欠ける児童を預かるところ」なのです。

仕事以外にも、病気や出産であったりも十分に入所理由となりそういった理由で預かっている子もすくなくありません。

また、最近では「虐待」を理由として入所してくる子もめずらしくなくなってきました。
仕事や病気でないので普通には入れないのですが、虐待する親と家庭に長時間置いておくことの危険があるので、児童相談所などが虐待を理由に申請することもあります。
また、親の虐待の相談を受けた行政が親・子のケアのために入所させるということもあります。

その子たちを見るのは臨床心理士などが専門的についているわけではありません。
普通の保育園の普通の保育士が、大勢の子の一員として保育していくわけです。

虐待されてきた子や精神の病を患ってきた親に育てられてきた子は、そうでない子と同じようにいくとは限りません。より手厚く関わったり、より見守っていく必要が圧倒的に多いわけです。

別にそういった要因がある家庭の子でなくとも、昨今では子供の育ちに多くの問題を抱えていることが少なくありません。
今保育園に来る子がかつての保育園の子供達に較べて、ずっとケアしなければいけないことが増えているのは明らかな現実です。

おそらく幼稚園の学習においても以前よりずいぶんと、それを幼稚園教諭が教えていくことが、難しくなってきているのではないでしょうか。


そんななかで幼稚園と保育園を一緒にさせるという考え方自体が、現場にいる人間からは信じられないことなわけです。


僕としてはむしろ幼稚園・保育園のさらなる専門性の確立こそがいまの時代に必要なことだと強く思います。

日本の保育科、幼児教育科のある大学では、単位の修得さえすればそこで両方の資格を取得できるところが少なくありません。
僕はもうこれはとっととやめるべきだと思います。

保育科に通う学生が保育園に実習にきたりします。
これがゆとり教育世代というものなのか僕にはよくわかりませんが、近年その質がどんどん低下してきています。

保育実習のカリキュラムなどは園側が指定するのではなく、学校側・基本的には学生自身が「こういったことをやらせてください」と持ってくるのですが、その自分からやらせてほしいといってきたはずの責任実習(なんらかの課題を実習生自身が企画し子供に対して主となって最後まで行うもの)の企画案をまったく準備してこなかったり、子供の名前すら覚えていなかったり、初日から遅刻してきて悪びれもしなかったりと、とてものこと実習のできるレべルに到達していない学生が多くなってきて驚かされてきました。

そのように学生の質が低下する以前から、学校で習ってきたことは役に立たなくて当たり前みたいなところがありました。(このことは他の分野でも同様かと思いますが、どうも日本人の考え方には学校・社会どちらの側にも勉強と現実のギャップが当たり前とするような考え方があるようです。)

しかし、そんな学生でも働き出したその瞬間から、より踏み込んだケアの必要な子供をみなければならない可能性があるわけです。いえ、実際には可能性ではすまず確実にみることになるでしょう。
保育士はたんに子供の遊び相手ではありません。
その保育士にそういった子に関する予備知識、対応法などの知識がなければ、それらの子はたんに問題児として扱われ良い育ちを提供することからは遠ざかっていきかねません。
そして現実にはたくさんそういう例があります。


なおさら高い専門性が必要とされているわけです。

学生のときに実際的にそういったこと関わる経験を持つことは難しくとも、少なくともそういう子があたりまえにいて、どういう対応をしていく必要があるのかくらいは本の上でもいいから学んでくる必要があると思うのですが、現実には以前と変らずどっちつかずの保育士・幼稚園教諭の資格をただ与える場になっているにすぎません。

むしろ保育士と幼稚園教諭を最初からきちんと分け、個々のスペシャリストを養成していく必要があると思うのですが。

施設としての幼稚園・保育園もさらなる専門性をもっていかなければならない時代にきているというのに、いまここに来て幼保一元化がさらに推し進められています。


ではなぜ幼保一元化なのでしょうか。
僕が思うにその答えは1にも2にも3にも4にも お金 です!
政治家の人たちが、どうやら大好きらしいお金です。
それにつきましてはまた次回につづきにします。




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● COMMENT ●

福祉専門職としての保育士

興味深く拝見しました。
貴兄のおっしゃることに首肯できるところ非常に大です。

しかし、さらにこの問題の大きくしているところは、保育所と幼稚園の二項対立の問題ではないところだと私は思っています。

保育所は児童福祉施設の一形態です。その他に、児童福祉法で規定される福祉施設は保育所の他に十数区分あります。つまり、保育所の他にも児童福祉施設は多くあり、幼稚園と保育所の一体化という矮小化された議論では済まされないことだと思っています。

この議論の中で、保育所は児童福祉施設の一形態であることを再認識すべきであると考えていますし、養成教育の中でのその認識を再度確認する必要があるのではないかと考えております。



No title

なるほど~。
>幼稚園・保育園のさらなる専門性の確立こそがいまの時代に必要なこと

そうなんですね。
ニュースとかでやってるのを見てると利用者側にとっては便利そうだなと思っていたのですが、そういう詳しい事情は実際に現場におられる保育士さんでないとわからないですね。
まして、私の周りだけでも保育園と幼稚園の違いというのは本当に知らない人がとても多いですから。

今回のお話もとても勉強になりました。
こういう事情をもっともっと多くの一般の人たちにも知って欲しいです。

まぁ、政治家がお金が好きなのはずっと昔からのことですからね・・・。
どうせお金がらみでどんどん勝手に上の方で話がすすんでいくのでしょうね。
もっとまともな政治家が増えて欲しいものです。

anikiさん

そうなんですよね。
これから書くつもりではいたのですが、単に保育や幼稚園の利便性がどうとかの裏に、福祉切りという政治家の罠ががっちり隠されていることが大きな問題なのですよね。
本当に日本が経済的に豊かになってきたのはなんだったのか、一般市民に政治の失敗のつけをまわすような政策をとっている日本の政治とはなんなのか、憤ることばかりです。

さっちんさん

>利用者にとって便利になる

実はこのことの裏には大きな問題が隠されているのですよ。
事情がある程度わかるとこれがほんとにひどい話だというのが見えてきます。
次回以降それについてかいていきますね。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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