2018-05

「父兄」と「父母」の違いの裏にあるもの ~女性の人権~ - 2018.01.18 Thu

いくつかの記事を通して、男性保育士の気をつけるべきところから、子供の人権の問題へと視点を移してきました。

これはある種の必然で、男性保育士の問題の背景には、人権の理解の乏しさが関わっていることが多いからです。
そして、この問題は男性に限ったことではありません。




人権というのは、なにも大仰なことではないのです。
人を相手にしている職業においては日常の中で不断に関わってきます。

特に、保育はとても近い距離で人(子供・大人)と関わります。

一般的なサービス業といった職種も人と関わりますが、それは接遇マナーといったものを守れば事足りる範囲であるのに対して、保育はさらにそこからもっと踏み込んだ立場で関わっています。(医療・介護・教育なども同様の性質を持つ)


それゆえに、保育士は人権についての理解と、その継続した学びが必要です。

例えば、おむつ替えひとつとっても、相手の人権について理解している人とそうでない人では関わりの実際、そこにおける感情の交流がまったくと言っていいほど変わってきます。そして、そこから子供の中に育まれるものも・・・・・・。

これについてはまた別の機会に見るとして、今回は「父兄」と「父母」という言葉について考えてみたいと思います。



「父兄」と「父母」といういい方、みなさんは通常どちらを使うでしょうか?
おそらく多くの方が、現在では一般的に「父母」という表現を使っているのではないでしょうか?

かつては「父兄会」と呼んだものも現在では「父母会」「保護者会」といったいい方になっています。

以前は、一般に保護者を指して「父兄」と呼び習わしていましたが、そこから「父母」さらには、「保護者」、いまでは保護者といういい方も避けて「おうちの方」と呼んだりするところもあります。

しかしながら、古くからある施設や、年配の保育士などでは昔からの習慣で、つい「父兄」といったいい方を使ってしまう人も見られます。


おそらく、いまの方はほとんど「父兄」といういい方はしなくなっているかと思います。
では、なぜ「父兄」ではなく「父母」と呼ぶべきなのかその理由も理解しているでしょうか?

ここにもやはり人権の問題が関わっており、これからの家庭支援を考える上でも基本的なところです。



まず、この問題の背景をとりあえず理解するには、「選挙権」で考えるとわかりやすいです。

はるか昔、王様がいた時代は、政治に参加する権利はごく一部の人のものでした。
その後、近代にいたり、参政権がだんだんと広がっていきます。
それでも最初は、ごく一部の人だけのものでしたが、「市民」という考え方の広まりとともに、さらに拡大されます。でも、まだ男性の一部だけです。
そこから、さまざまな努力の上に、成人男性全体へと広がりました。

それでもまだ、女性には参政権がありません。
この時代は、「女性は男性に劣るもの」といった社会通念がありました。(その後の女性参政権獲得への激動期を私たちは小説『赤毛のアン』の中で触れることができます)
日本で、女性も選挙権が得られたのは、戦後になってからの1945年(昭和20年)です。

しかし、その後も男性が上で女性が下といった通念は社会の中で残り続けます。
そのひとつの表れが子供の保護者を指して「父兄」とする呼び方です。

その呼び方をなんの悪意もなく使ったとしても、そこには歴史的背景として、「女性は取るに足りないもの」という考えを反映したものであることは揺らぎません。

ですから、現在は「父兄」という呼び方は不適切と考えられるのです。



日本でこの背景にあるのは、戦前にあった「家父長制」というものです。

この制度は、法的には戦後の日本国憲法下では失効しますが、現実問題としてそういった通念は残り続けます。むしろ、高度経済成長期において父親が、家庭内唯一の収入の主体になったことで「強い父親像」が強化されたとすらいえるでしょう。

現在でも、児童虐待の被害にあった人の支援をしている方などは、「私たちは日々家父長制の亡霊と戦っている」といったことをもらしています。

これと同様のことを、子育てカウンセリングをしている僕自身、多くの人の相談の背景に頻繁に感じます。



◆おわりに

「父兄」という言葉を使わなければ問題ないのではないか、と思うかもしれません。
しかし、僕がなぜいまさら「父兄」と「父母」の違いを指摘したかというと、実はこの問題は終わっていないからです。


仮に、園に荒れている子がいたとします。
もしかすると、その子が荒れている背景には、母親が夫から経済DVを受けていたり、その親や義父母から攻撃的だったり、支配的な関わりを受けているのかもしれません。
それがまわりまわって子供に影響を与えています。
その子の問題を解決しようと思ったとき、その親への理解が必要です。


そういった子や親に支援をしなければならない時代になっています。
今度改訂の保育所保育指針も、家庭支援を重視していますよね。


言葉の上のアプローチだけならば、そういった対応の上手い人の受け売りでもできます。しかしそれでは、そこにともなう感情までは寄り添ったものになるとは限りません。

そのとき、その親の立場を理解し寄り添えるか、それとも否定的にとらえることになるのか、それは保育者のそのような背景への理解がものをいうのです。




参考:『家父長制とジ ェ ンダー平等 -マイノリティ女性条項が新設された2004年DV法1を手がかりに-』  三重大学教授 岩本 美砂子
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nenpouseijigaku1953/57/1/57_1_171/_pdf

 :『日本の家族制度』 小樽商科大学教授 江頭 進
http://www.otaru-uc.ac.jp/~egashira/diary/Cambridge/family.htm

関連記事

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://hoikushipapa.blog112.fc2.com/tb.php/1127-08ba107c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

おとーちゃんはメロン味 vol.1 «  | BLOG TOP |  » 名前を呼び捨てにすること ~子供の人権~

ごあいさつ

ただいまコメント欄での子育て相談は休止中です。 お悩みのコメント下さっても回答を差し上げることができません。 申し訳ありませんが、過去記事、すでにある返信コメントなどを参考になさってください。 多くの相談への返信がすでにあります。関連するカテゴリーから探す、検索を使って探すなど利用してみてください。 多忙になってしまい、コメントへの返信ができなくなってしまいましたが、お寄せいただいたコメントにはすべて目を通し更新の励みになっております。ありがとうございます。

最新刊

よければレヴューも書いてね!

前作!

最新記事

最新コメント

プロフィール

保育士おとーちゃん

Author:保育士おとーちゃん
当ブログはあくまで個人ブログであり、記事の内容および相談・コメントの返信等は効果を保障するものではありません。
ご利用に当たっては自己責任でお願いします。

楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

講演等のご依頼

講演・ワークショップ等のご依頼はFacebookのメッセージ または『保育士おとーちゃんホームページ』 http://hoikushioto-chan.jimdo.com/ よりどうぞ。

カテゴリ

はじめにお読みください (1)
【まとめ】記事 (2)
子育てノウハウ? (76)
子育て日記 (13)
保育園・幼稚園 (101)
日本の子育て文化 (174)
おもちゃ (27)
叱らなくていい子育て (9)
排泄の自立 (11)
『魔の2歳児』 (5)
子育てまめ知識特集 (4)
あそび (41)
おすすめグッズ (8)
おすすめ絵本 (23)
食事について (15)
過保護と過干渉 (45)
満たされた子供 (7)
早期教育 (20)
我が家の子育て日記 (93)
心の育て方 (105)
相談 (84)
子供の人権と保育の質 (61)
その他 (62)
未分類 (22)
講座・ワークショップ (88)
父親の子育て参加について (3)
雑誌・メディア (28)
子育てに苦しむ人へ (18)

保育ひろば

保育ひろば

楽天

FC2カウンター

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

おしらせ♪

当ブログはリンクフリーです。トラックバック・リンクはご自由にどうぞ。 しかし、本文・コメント・その他を含めて著作権は私にありますので、引用・転載する場合は連絡をお願いします。また引用元の記載も併せてお願いします。 なお写真の転載はお断りいたします。

ランキングに参加しています

検索フォーム

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

QRコード

QRコード

アクセス解析