2017-11

なぜいま早期教育が注目されるのか? - 2010.06.22 Tue

早期教育というのは以前からあるものですが、ここ最近さらに関心が高まり、またその内容も変化しつつあります。
おそらく様々な要因が重なって、いまの状況を生んでいると思います。


早期教育を考えるにあたって、なにがそれを必要としているからなのか、それを知ることはいろいろな問題を乗り越える上で大事なことだと思うので、とりあえず思いつくことをあげてみたいと思います。




・学校教育に対する不安・不満

・ゆとり教育に対する反動


・ニート・ひきこもりなどの社会現象への不安

・「勝ち組・負け組」という言葉に表されるような、社会格差に対する不安



・少子化による、一人一人の子に対する期待の高まり

・また少子化により、一人当たりにかけられる金銭の増大

・親世代の価値観の変化 (ex.金銭観、人生観、幸福観、セレブ志向など)

・親の自己実現の投影(親の希望や、親自身のコンプレックスの克服をこどもに託す など)

・子育てに対する不安・自信の持てなさ


・経済悪化により、『早期教育』という大きな市場への企業の関心の増大

・また、それら企業・マスコミによる宣伝効果



ざっと思いつくところをあげてみましたがどうでしょうか?

これらを簡単にまとめてしまえば、上から ・学校・教育に関する不安  ・社会に対する不安  ・こども、子育てに対する価値観  ・商業的な側面

といった感じです。



こういったものやそれぞれの個々の事情などがあいまって、いま早期教育への関心が高まっているのではないでしょうか。

これはアンケート調査などで導きだされたものではなく、はなはだ僕の主観によって上げたものですから断言できるものではありませんが、どうも多分に「不安感」というものが大きなウエイトを占めているようです。








たしかにこどもの幸せを願えば願うほど、いまの社会の状況って不安に感じてしまいますよね。
だから、その不安を軽減するために「早期教育をとりあえずさせておこう、あとで気がついてからじゃ遅いことだし・・」のような向きもあるのではないでしょうか。


また、ここに上げた  [・子育てに対する不安・自信の持てなさ]  というのも自分の周りの経験から強く感じています。


 「子育てどうしたらいいかわからない、なんだか手がかかるばかりだし。勉強くらいできるように早めに手をうっておこうかしら・・」
という雰囲気でこどもに早期教育を施している人も多々見受けられます。

また、うまくいかないが故にそういったものに解決をゆだねたり、習い事などしている間は(普段手のかかる)こどもを見ないで済むという人もいるようです。



そしてやはり大きいのが、宣伝をしている企業やマスコミの存在です。 

むこうも商売ですから、きちんとそれらの親のニーズや不安を見越してアピールしてきます。
もっと困るのは、取り残されてしまうこと、早期教育しないことの不安をかきたててくることです。

実際は、もっともらしく理由をあげているところでも、かなり昔の仮説によっているだけで、検証された論理的根拠が無かったりあいまいなまま、ビジネスとして続けてきてしまっているようなものも少なくありません。



でも、人間ってもっともらしい明解な理由を言われると、つい自分で考え判断することなくそのまま納得してしまうということが良くあるのですよね。

血液型性格判断なんかがそのいい見本だと思います。
ちょっと考えれば、血液型で性格が分かれるなんて17世紀レベルの科学黎明期のような論理が成り立つわけもないのに、なんとなく信じちゃってますよね。
まあ、実害ないし話としては面白いから、僕も「B型だから、わが道いっちゃうんだも~ん」みたく使っちゃいますけどね(笑)。

まあ、そんなこと上げていけば世の中にいくらでもあります。


早期教育に関しても、明解な論理+不安の解消+未来における成功+信じたい のような感じで市民権を得てしまっているようなところが多分にあるのではないでしょうか。


最近マスコミで話題になった、なんとかばあちゃんの脳なんとかも、やってる内容は良いところもあるけれども(変なところもありますが・・)、論理的根拠としている大脳生理学に関する点もわりと怪しいところがあります。

聞けばその論理を組み立てたのはかれこれ40年前も前とのこと、僕は10年ほど前に東大名誉教授(現 理化学研究所脳科学研究センター所長)の伊藤正男氏と立花隆氏の対談を基調講演とした脳科学のシンポジウムにでたことがあるのですが、そのときの印象に残っている言葉が「脳の研究は、いまようやくスタート地点にたったようなもので、何もわかっていないということがわかったに過ぎない」というものでした。

40年前の理論でもその後科学的に検証して、実効性が明らかになったとかならわかるのですが、それもないまま言っているにすぎず、思い込みやこじつけに近い部分もあるのだと思います。

まあ、それでもやっていること自体は悪いことではないから否定するわけでもないけど、早期教育の論理にはそういった点が多分にあるということです。


アメリカでは追跡調査なども含めた早期教育の問題点のデータがあげられてきて、その実効性に対する詳細なデータなどもでてきています。
(興味のある方は ワシントン大学 テンプル大学 などで調べれば見つかるかと思います)


また、右脳が、左脳~~だからといった理屈も、実際はまだ立証されたわけでもなく、一部の発見されたことと早期教育を関連付けているだけで、科学的根拠があると言えるレベルではないようです。

昔から、早期教育の根拠となる研究に「スキャモンの発達曲線(神経型)」(1930年)というものがあり、これは人間の脳の神経細胞の発達はおよそ6歳までに90%ほどが発達を終えるというもので、だからそれまでの時期に知的刺激を加えると能率的なのだという話だったのですが、スキャモンが発見したのは脳神経細胞が作られているということまでであって、だからこそ早期教育が良いのだということには必ずしもなりません。


少し前まで、脳神経は20歳くらいまでしか成長しないと言われていましたが、現在では大人になっても脳神経が新しく作られていることもわかっています。


人を早期教育に駆り立てるものに、「臨界期」という考え方があります。

ある時期を越えたら身につかなくなってしまうものだから、それまでに身につけなければならないというものです。

そういわれると、なんだかあせってしまいますが、こと勉強などに関してそんなことはまったくありませんよね。
もしそうならば、例えば6歳くらいまでに一生分の学習をしなければならないということになってしまいます。


一部のことにはたしかに臨界期というものはあります、例えば「絶対音感」などということはその一つですが、早期教育を提唱する幼稚園保育園が言うように、必ずしもそんな小さいときでなければならないということもなくて、諸説あるけど14歳くらいというのが定説のようです。


日本では1970年代に早期教育ブームが起きました。
そのきっかけとなったのはソニー創業者の井深大氏の著した『幼稚園では遅すぎる』(1971年)という本からだそうです。
しかし、その中で早期教育を提唱していた井深氏も1990年4月29日の朝日新聞上に発表された「幼児開発協会20年の経験」という記事の中で、
「いろいろやっているうちに、本当に必要なのは知的教育より、まず、『人間づくり』『心の教育』だと気付いた。学校では落ちこぼれ、暴力、いじめが頻発している。心を育てるには、学校教育だけではなく、母親の役割が何よりも大切であり、子どもの方も幼稚園どころか0歳児、いや胎児期から育てなければならないという考えに代わってきた。」「赤ちゃんの温かい心づくりと、生まれた時からの体づくりが、何よりも重要で、知的教育はことばがわかるようになってから、ゆっくりでよい、という結論になった。」
と早期の勉強よりも心の健やかな発達を重視するほうがよいと考え方が変わったようです。



とまあ、ちょっと話がそれてしまった感じですが、大きく考えて「親の様々な不安 と そこに目をつけた企業の思惑」「親の価値観の変化」といったあたりに、いまの早期教育志向の原因があるのではないでしょうか。


余談ですが、不安を煽るのって物を売りたい大企業の常套手段でもあるのですよね。
口臭予防とかレノアとかファブリーズとか過剰なくらい煽るわけなのですよね、一つケアする場所を作り出したらビッグマネーが動くと言われているらしいです。

では次回につづきます。


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● COMMENT ●

No title

こんにちは。
私の周りにも早期教育とやらで、0歳から七田式とやらに通わせている友達がいます。
気の合うママともが出来たとの事で、それはそれでいいんでしょうね。
子供に期待しすぎず、親子でほどほどに楽しめる程度ならむしろいいのかなとか思います。
でもお金もかかることだし、やっぱり期待をもってしまいそうですね。

最近井深大さんの『0歳からの母親作戦』という本を読みまして、ブログに感想を書いているので、もしよければのぞいてもらえるとうれしいですe-446

http://piropiro705.blog68.fc2.com/blog-entry-54.html

hi-ro-さん

> こんにちは。
> 私の周りにも早期教育とやらで、0歳から七田式とやらに通わせている友達がいます。
> 気の合うママともが出来たとの事で、それはそれでいいんでしょうね。
> 子供に期待しすぎず、親子でほどほどに楽しめる程度ならむしろいいのかなとか思います。

そうですね、前項でも書きましたが、わりと早期教育そのものよりもその周辺にあることが親や結果的にこどもによい影響をあたえていることも多いようです。
東大の汐見先生はそのことを「早期教育的雰囲気」と呼んでいました。


> でもお金もかかることだし、やっぱり期待をもってしまいそうですね。

やれば、当然なんらかのリアクションを求めてしまうのはしょうがないですよね。
それがこどもに悪影響を与えない程度ならばそれほど問題ではないのですが、親の反応も人それぞれなのでここらへんも割り切るのが難しいようです。

ただ、七田式のようなフラッシュカード法は、アメリカなどでは明らかな弊害のデータも出てきてしまっているので、注意は必要かと思います。

友達とのいさかい

こんにちは。

息子は年長、5歳です。妹が一人で今0歳。
幼稚園に通っています。

我が家は転勤族で、去年東京に引っ越し、保育園だった息子は、私が専業主婦になったことで幼稚園に入ることになりました。

おおむね幼稚園での生活は楽しそうですし、公園に行けば幼稚園友達と遊んだり、私が見ている限りでは特に問題がありそうには思えません。幼稚園の行事も楽しそうに参加しています。
本人の生活ぶりも、東京に来てなれたのか、平常通りです。

ただ、最近、幼稚園の友達との話で「〇〇君とは、仲良くできないんだよ。」「××君がいじわるする」などと、友達関係がうまくいっていないような発言が出ます。
いじめ、というよりは、いじわるという程度のようです。

これがどれほど深刻なのか、私は判断がつきかねています。夫に相談しても、「もうちょっと様子見ようか」といった感じですし、その意見に特に反対もしていません。
息子が相手に意地悪をした結果かもしれないですし、ただ単にそのこと気が合わないだけかもしれません。

でも、なんとなく不安な気持ちです。
先生に相談したいとは思っているのですが、若い先生で、元気で明るくていい先生だろうとは思うのですが、細かい保育指針をお持ちでないような気がして、軽くあしらわれそうで、相談しないまま来ています。

大人だって、気が合う人、合わない人がいるように、子供にだってあるだろうなって思っていますが、年長ぐらいの男の子の人間関係ってどんなもんなんだろうと、想像してもよくわからないままです。

お時間があれば、子供の人間関係や、その時の大人の対応についてお話していただきたいと思います。

グミさん

思っていることはなんであれ我慢せずに相談するだけしてみたほうがいいかと思いますよ。

特に有効な対策を立てられなかったとしても、その場にいる大人である担任がちょっと意識しているだけでも子供の行動というのは変わってきます。

担任に話しづらければ、責任者である園長にしてもいいのです。


「子供がこういうことを言うのだけどどうなんでしょう。ちょっと心配しています」というようなことを伝えて、それとなく気をつけて見てもらえば、実際は子供同士のよくある経験のうちのことなのかもしれないし、少し大人に意識してもらうだけで改善することかもしれません。

もしそういう傾向があったとしても、適切なケアをその子に施すことができたとしたら、それはその意地悪をする子にもためになることです。


年長くらいならば大した問題でなくとも、小学校になってもその関係を引きずってエスカレートしてしまったというような話も耳にします。
園側としても小さいうちほど対応はしやすいので、早くに気づけることはメリットになりますよ。


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楽しく無理のない子育てを広めたいと2009年ブログ開設。多くの方の応援があって著作の出版や講演活動をするようになりました。 現在は、子育て講演や保育士セミナーの他、『たまひよ』や『AERA with Baby 』等の子育て雑誌の監修やコラム執筆。『ジョブデポ保育士』の監修や育児相談などをいたしております。

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