2017-07

「NO」の言える関係 - 2017.05.01 Mon

現代の大人は、子供を「大事にしなければならない」「尊重しなければならない」ということは理解しています。

しかし、それが「実際のどういった行動を指しているのか?」までは、あまりはっきりとは理解していないようです。






そのひとつが「子供の気分を害してはならないのだ」といった解釈です。
また、「子供に叱ったり、怒ったりといったNOに類することを言ってはよくないのではないか」といった気持ちです。

多くの人にとってこのあたりの理解が難しくて、結果として子育てを難しいものにしてしまっているケースをたくさん見かけます。



例えば、「子供の感情を整えてあげることがいいことなのだ」といった理解になってしまうケースです。

子供がなにかとても叶えられない要求や、大人がして欲しくないことをしたがっているときなど、なんとか大人がそこをなだめて納得してもらおうとアプローチしたり、別のものでごまかしをすることで気を紛らわそうとしたりする関わりがあります。

これは一見「親切」なように見えます。
しかし、本当は「親切」ではありません。

このスタンスで乳児期を過ごし、例えば2歳なり3歳なり5歳なりになったとしましょう。
するとその子は、自分の要求ばかりを出し、感情的で、自立心や社会性が育っておらず精神的に幼い状態、いわゆる「甘やかされた子」になってしまうことがあります。


なぜか?
それは小さい内に、「自分の要求や感情の通りにならない」経験をすることが少なかったために、精神的に成長することがあまりできなかったためです。
別の言い方をすると、「葛藤」をする経験がとても少なかったからです。

また、「自分の感情をコントロールする力が育たない」まま、その年齢にきてしまったこともあります。


「感情」というのは、実はコントロールする能力をともなっています。

例えば、遊んでいて転んでしまった1歳児がいたとします。

そのとき自分の失敗を自分で受け入れられず、八つ当たりする方向で感情をだしてしまうことがあります。
これ自体は悪いわけではありません。そういった発達段階であったり、そういった性格・個性を持っているということもあるからです。

しかし、ずっとその状態でいてもいいわけではありませんよね。

こんなとき例えばその子はお母さんに八つ当たりをしたとします。
「ママが悪い!」と。

まだ感情のコントロールが未熟な状態なので、「自身の失敗」というネガティブな状態を乗り越える力が育っていないわけですね。
なので、それを自分のせいではなく、誰かのせいにすることによって、その葛藤を回避しようとしてしまっている心理状態です。

このとき、「そうよね、ママが悪かったわよね。ごめんねー」などと対応してしまうと、その葛藤の回避に大人が力を貸してあげるということになってしまいます。

すると、この子はそういった葛藤をすることで、自身の感情をコントロールする経験をしないまま年齢だけが上がってしまいます。
そうなると、本当に困るのはこの子自身です。

「わがままな子・自分勝手な子」という状態にあるその子を、周囲の友達も保育園や幼稚園・学校の先生なども、そしてなにより祖父母などの家族や、さらには親自身もその子を「かわいい子」といった肯定的なとらえ方をできにくくなってしまうからです。

「親切」に思える関わりが、実は本当の意味では少しも「親切」になっていないというのはそれがためです。




「子供を尊重する」というのは、「嘘のない関係」に言い換えられると僕は考えています。

大人が本心で「嫌だな」と思っていることを、我慢して子供を言いくるめることは、それは少しも尊重ではないと思うのです。
それは対等ではないから。


アプローチの前の子供のとらえ方として、「子供を下に見る気持ち」(言いくるめる対象・なだめてあげる対象・できない存在としての認識 =低いもの)があり、
アプローチとしての、実際上の「大人が下手に出る関わり」があります。

子供を下に見て、同時に行動面では上に置くというなんともアンビバレンツなねじれた関係がそこには構築されていくでしょう。


「嫌なことは嫌」と言えることが、嘘のない関係であり、それは人として対等の関わりであり、結果として「尊重」になっているのです。
これは夫婦関係などの大人の人間関係においてもそうですよね。ただ、そこには大人ゆえの難しさがあるけれども・・・・・・。



そして、その正直な関係が自然と子供に必要な「葛藤」を経験させ、心の成長をうながしていけるのでしょう。


これは例えば、子供が「○○買って~」といったときもそうだし、食事の準備をしているときにごねられるといったことや、下に弟妹が生まれたときの上の子への対応などでも同様のシーンがたくさんでてきます。

これらをまとめると、「心の過保護」という傾向が現代の子育てでは課題のひとつになっていると言えるだろうと思います。

目に直接見えることではないので、こういった心や感情にもとづく子育ての機微を伝えるのは難しいですね。



ところで、僕は講演で関西方面に呼ばれることが多いのでよく実感するのだけど、関西の言葉には「そんなん嫌やわ~」とか「ええやんか」などなど、感情をともなった言葉のボキャブラリーが多くてとてもいいなと思うのです。
自然に大人の気持ちを言葉に乗せられるので。

標準語的な言葉はどうもそのあたりが硬いというか難しいのだよね。
だから、特に怒ったり叱ったりといった負の強い感情ばかりが際立ってしまって、ささやかなNOとか本音のNOとか、自然な肯定やうれしい感情・喜びの感情などを表していくことがプラスの方もマイナスの方もけっこう意識しないとできないようです。


でも、だからといって関西の人が子育てに悩んでいないかというと、必ずしもそんなことはないわけで、だから僕が呼ばれるのだけどね。


関連記事

● COMMENT ●

難しい課題ですね

子供を尊重しなければならない。けれど、大人の嫌だと思うことはきちんと教えなければならない。匙加減がとても難しいなと思います。

以前、友人と、友人の子供(1歳児)とショッピングモールへ行ったのですが、ぱたぱたと歩き回っておもちゃ屋さんのおもちゃをじーっとのぞきこんでいたその子に、友人は「〇〇(名前)!」と強く名前を呼んで別の場所へ連れていく……という光景を目にしました。「こうしないと、いつまでも見てしまうから」というのが友人の弁でした。その後も、色んなものを見つけてはあちこちへ歩いていってしまう1歳児に向かって、何度も強く名を呼んで連れ戻していたのです。私は「好奇心旺盛で可愛いのになぁ」と思っていましたが、やはりこの場合は「ショッピングモール(公共の場)だから(=大人にとっては困ることだから)連れ戻す」という友人が正しかったのでしょうか?

以前、おとーちゃんさん自身も書かれていましたが、たとえば「ごはんを下に落としてしまう」場合は、「子供に悪意がないのなら、『落として欲しくない』という気持ちをしっかりと伝えつつ、『叱る』『規制する』ことはしなくていい」とのアドバイスがありました。
この「大人の気持ちをしっかりと伝える」というところが肝なのだろうと思いますが……それをしつつ、『規制する』ことはしない。自由にやらせてあげる…??そのあたりの見極めが難しいなと思いました。
ショッピングモールを歩きまわる子供がいたとしたら、すぐに連れ戻すのではなく、「お母さんはそういうことしてほしくないな」と伝えつつ、歩き回る子供を見守る…ということでしょうか?? ……難しくて混乱してきてしまいました。

けれど、今日の記事もたいへん参考になります。子供の「心の育てかた」が、子供の幸福のためには何より大切だと思っていますので、引き続き「心の育てかた」に関する記事を楽しみにしています。

怒りの表現が乏しいです。怒りたいときは、怒っていいと分かっているのですが、気付いた時には、もうブチ切れておかしくなってしまいます。うるさいと叫んで壁や物にあたったり。かろうじて子どもをぶったりはしません。上手な怒り方、どうしたら良いでしょうか。

難しいテーマですね

はじめまして。とても面白くブログをいつも拝見させてもらっています。

現在、私も2歳の子供を育てておりますが、このテーマは本当に難しいと思います。

私自身がとても親に怒られて育ったものでして、自分の経験から「自分のやりたい事、言い分が尊重されない辛さ」
というか…なにかそうゆうものを抱えながら今現在もそれをちょっと引きづって生きてる所がありまして。

しかし、反して「身の回りの事は親がなんでもやってくれた」という事もありました。
それで、自分の「ワガママな性格(勘違いしてたというか)」で思春期に友達関係で苦労したという経験もあるんです(笑)

そうゆう経験から自分の子供はなるべく、「子供の気持ちを尊重したい」
「しかし、ワガママになってはちょっと困るぞ」
と考えて育児をしているのですが……

このバランスがとても難しいというか、
2歳児はこちらの想像をこえるイタズラ、悪さ、もしてくるわけで…(笑)
でも、「まだ2歳だし、2歳だから仕方ない」と見守りたい気持ちもあります。
そこでいつも葛藤しています。

癇癪で暴れだした時は
時に優しく気持ちを代弁してなだめてみる事もありますが、
それでも出てくる過激な要求……最近は特に知恵がついて
こちらが確実に困る事をあえて要求してきたりします。

あまりにも酷いと感じたとき、思わずほっぺたをつねってキツく怒った事もありますが、
なんとも言えない罪悪感というか、これでいいのか?と不安になります。

自分が子供の頃「納得いく怒られ方」をしてこなかったからなのか、、、、
これで大丈夫という自信がいつまでたっても持てません。。。。

本当に難しいテーマだと思いました。

今後も記事を楽しみにしています。

>なみさん

なにか問題を感じるとき、人はその問題そのものへの対処に目が行ってしまいますが、そういうときはその前の段階を見てみると解決方法が見えてきます。

怒りが制御できなくなってしまう人は、そこを問題視するので「怒らないようにしよう」とか「怒ってしまう自分が悪い」といった自己否定にいってしまいがちです。

でも、「怒らないようにしよう」と思うこと自体がストレスを生みます。
すると、その思い自体が怒る原因のひとつともなりかねません。
結果的に「怒らないようにしよう」と思うと、イライラやストレスが増えてかえって怒ることにつながってしまいます。

なので、前の段階を考えるのです。


そこで出てくるのが「自己開示」ということです。

自分の思いや感情を押さえることよりも、むしろ出すことで安定化をはかります。


例えば、

・「今日は私疲れちゃったから、あなたと遊ぶのちょっとしんどいのよ、ひとりで遊んで頂戴」
・「私ちょっと嫌なことあって、気持ちがイライラしちゃっているから騒がないで静かにあそんでほしいの」
・「今日は具合が悪くてあまり笑顔がでないのよ、ごめんね」

などなど。

自分のスタンスを正直に出すことで、相手(子供)にもそれを踏まえた上での行動を取ってもらいます。
子供だからそれが完璧にできるとはいえないけれど、多少なりともそれを受けた行動をとってくれるようにだんだんとかもしれないけどなっていけます。

すると、お互いが尊重し合う関係になり、無理がへります。
怒ることが結果的に減ることにつながるかもしれません。

日本の子育てでは、大人が「我慢すること」「自己犠牲すること」を無意識に考えてしまって、かえって自ら負荷をかけ子育てを大変にしてしまっています。


自己犠牲ではなくて、相手が子供であっても互いによいところを模索していくことが子育ての上でも必要なのだと思います。


自己犠牲して我慢してしまうと、「ぶち切れて」しまいますね。
それは、溜めてしまうからなのね。

むしろ普段から小出しにしてしまっていいのです。「プチ切れる」のです。プチ(petit)ね。


そこで本文にでてきたけれど、「大阪のおばちゃんロールプレイ」をしてみましょう。

自身の感情に正直に、

・「あ~そんなん嫌やわ~」
・「なにいうてますの~」

ごめんね、僕そんなに関西弁のボキャブラリーないのだけど、そんな感じで。

さらっと感情を出すということね。



もうひとつのポイントは、「怒ってしまったら怒ってしまったこととして割り切ってしまうこと」です。

それを後悔してマイナスにとらえていると、なかなかその悪循環から抜けられないので、怒ったら怒ったでいいんです。

その代わり、後悔や自己嫌悪はしなくていいから、子供にプラスの関わりをできるときだけでいいからちょっとずつ積み重ねていくこと。

これにより悪循環から抜けやすくなります。


保育士や学校の先生などはそれではいけないけど、親子関係ならばそれでも大丈夫です。

ノーと言ったこと

とっても久しぶりに書き込みます。
いつも読んでいます。
基本的に子育てはわりと寛容にしていますが、時には限界もきます。
昨日のこと。
うちの玄関の外を泥んこにして、そのまま家で遊ぼうとする小学2年の息子と同級生に、
ちょっと待ちぃー!
お母さんにこれ片付けさすんかぁ?!と
怒ってしまいました。もー、こうなったら怒りをちゃんと出した方がいいと思い、一緒にやるけど掃除の指示して大変さを味わってもらいました。

そんな時に部外者の子が、家の中から、
こうちゃんのおかあさーん、カキ氷つくってー。
ときたから、今おばちゃん掃除してるし怒ってるから、カキ氷作れへん!食べたかったら自分でやって!

と、きっぱりノーを言いました。
余裕があれば楽しんで出来るけど、
やっぱり、自分を抑えて、優しいお母さんに
なるのはよくないな、と。思いました^_^

明日は家庭訪問だから掃除してるのよって、みーんなに言ってたのに、だーれもお母さんの事情なんて気にかけて遊んでないのだもの^_^


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